過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】 -SS速報VIP

過去ログ - 【咲安価】　京太郎「……変、身ッ！」　１０クール目【仮面ライダー】

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815:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/08(金) 10:39:26.58 ID:eXxZahjZ0
夕姫は、名前だけでなく内面も美しい人だ。
半年程度しか見ていないが、それはわかる。
そんな彼女が、誰かを傷つけるはずがない、そう信じたい。

「男子九番・城龍慶君」

名前を呼ばれ、龍慶は我に返った。
何時の間にか、龍慶と史季の間にいる紫垣靖隆（男子八番）はいなくなっていた。
こんな時に好きな人に思いを馳せるなんて、我ながら平和な頭だ…
龍慶は溜め息を吐き、荷物を持って立ち上がった。
デイパックを受け取ると、強制された合言葉を淡々と述べ、教室を見回した。
光貴と新と目が合った。
いつもの元気はなさそうだったが、２人共それぞれの笑顔を浮かべた。
しかし、未来とは目が合わなかった。
じっと机を見つめており、一度も顔を上げてはくれなかった。
野田浩毅（軍人）に促され、龍慶は教室を出た。
未来……
夕姫のことも気に掛かるが、一番に気に掛けるべきは未来だ。
大人しいと思っていた未来が、芝崎務（担任）を殺害した。
いくら戦闘訓練を受けているからといって、そう簡単に誰かの命を、しかも無駄な挙動を一つもせずに、奪うことなどできるものなのだろうか。
あいつは、一体――
外に出ると、鼻を突く臭いがした。
薄いが、煙のような臭いだ。
火事…？
いや、火の手は見えない…
ふと足許に目を遣った。
床に、何かの燃えカスのような物が落ちていた。
これが燃えたことによる異臭だろうか。
龍慶は辺りを見回し――目を見開いた。
誰かが、倒れていた。
「おい、大丈夫か、おい――」
声は、届かなかった。
倒れている小柄な少年――植本邦幸（男子三番）は、既に息絶えていた。
最初に出発し、最初にクラスメイトに殺害されてしまったということになる。
その側には、木刀が落ちていた。
それを拾い上げる。
今はどの部活にも所属していないが、前の学校では剣道部に入っていた。
竹刀ではないが、持っていて損することはないだろう。
龍慶は木刀をベルトに差し込むと、側に落ちていたデイパックを引き寄せた。
必要な物をデイパックから出し、詰め込むために自分のデイパックを前に置き、改めて邦幸を見た。
ここで息絶えているということは、出発して間もなく殺害されたということ。
つまり、加害者は、邦幸の次に出発した浦原舞（女子二番）である可能性が高い。
そうすれば、江南佳菜彩（女子三番）や来栖生馬（男子五番）の悲鳴は、既に亡骸となった邦幸の姿に驚いたものと考えられる。
「龍サン…」
声を掛けられ、龍慶は右手を木刀に添えて振り返った。
「東海林…」
見上げた先には、龍慶の次に出発することになっていた東海林至（男子十番）がいた。
「その…その…倒れてるの……うえもっちゃん……？」
「…俺じゃない、それは信じてくれ。争う気なんてないんだ、本当なんだ」
「至、離れろ…っ！！」
龍慶と至は、同時に声のした方を見た。
目が痛くなるような赤いシャツを詰襟の下に着た北修司（男子四番）が、そのごつい手に銃を構えて、覚束無い足取りで近づいてきた。
「修司…」
「佳菜彩とアユもいる…！！早く、早く逃げるぞ…！！」
修司の言葉通り、校門の外の茂みから佳菜彩と川西亜由子（女子四番）が顔を覗かせていた。
至は修司の方へ駆け寄った。
修司はまだ銃口を龍慶に向けていた。
その手はガタガタと震えており、照準は定まっていないが。
「ちくしょう…ちくしょうちくしょう…
　“軍の犬”め、アンタもやる気なんだろ…？」
震える唇の間から洩れた修司の声は、恐怖と嫌悪に満ちていた。
普段、八尋グループのメンバー以外からは呼ばれたことのない蔑称だが、成る程、他のクラスメイトたちもそう思っているということか。
ぴくっと動いてしまった眉が、修司を刺激したようだった。
「何だよ、そうなんだろ！？お前ら、あの滝川って女とグルなんじゃねぇのかよ！！」
「やめなよ、修司！！」
茂みから飛び出してきた佳菜彩と亜由子が、修司を両側から抑えた。
抑えながら、亜由子がじっと龍慶を睨んだ。
「悪かったね、修司も混乱してるの、許してやってよ。」
ただでさえ鋭い目を持つ亜由子の放つ威圧感は、なかなかのものだった。
龍慶は、そこで初めて自分の右手がまだ木刀に掛かっていることに気付き、その手を離して、肩をすくめて見せた。
「混乱する気持ちはわかるし、東海林にも言ったけど、争う気はない。後“軍の犬”って新と光貴には絶対に言うなよ。大変なことになる」
「…だろうね、肝に銘じとくよ。じゃあ、あたしらは行くよ」
亜由子は佳菜彩と共に両脇から修司を支え、佳菜彩は至の袖を引っ張り、龍慶には背中を見せないようにしながら後ずさりしていった。
その様子を見ていた龍慶は、至を呼び止めた。
「教室で言ってたアレ、ラブ＆ピース…貫けよ」
至はにっこりと笑みを浮かべた。
「オッケー、任せといて！あ、龍サン、さっきはビックリしちゃってごめんね！」
至が大きく手を振ってきたので、龍慶も小さく返した。
あの４人はずっと一緒にいるつもりなのだろうか。
修司のあの動転ぶりは不安要素のように思えるが、冷静そうな亜由子と平和主義の至がいれば、うまく回るだろう。

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