864:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/07/10(水) 01:53:21.51 ID:wSnSqwBi0
自分の手の中には銃(CZ M75)が握られている。
その銃口からはまだ煙が出ていた。
目の前には稲毛拓也(男子1番)が転がっている。
理由は簡単だ、彼の命を奪ったのは他の誰でもない、自分なのだから――
戎嘉一(男子2番)はCZ M75を下ろし、拓也の死体を見つめた。
腹の傷によって、カッターシャツは赤く染まっていた。
頭の傷からはゆるゆると血が流れている。
「稲毛…ケンカは強かったんだけどね…
こんなにあっさりと死んじゃうんだねぇ…」
嘉一は拓也の傍に落ちていたダガーナイフを拾い上げた。
これが拓也の支給武器だったのだろうか?
とにかく、拓也はそのナイフで嘉一を殺そうとしていた事には変わりはない。
「全く…
太陽を背に襲ったらバレバレじゃないか…
ま、クラス最下位らしいし、仕方ないかな…」
嘉一は決して気配に敏感な方ではないし、反射神経も良くない方だ。
それでも拓也の存在に気付いたのは、拓也が朝日を背に立ったため、影が出来てしまったからだ。
その影に気付き、そちらを向いた時に拓也は丁度ナイフを振り上げていた。
だから、返り討ちにする事が出来たのだ。
とりあえず、嘉一は拓也のズボンに手を突っ込んだ。
紙に触れたのがわかり、それを出した。
真っ白の紙だった。
なんだ、死神じゃないのか…
コイツはオレを殺そうとしたのか…
ただ人数を減らすためだけに…
ふーん、と2,3度頷いた。
「一応同じ考えかな?
ただ僕は君みたいに計画性の欠片も感じられないバカじゃないけどね」
クラスの連中はバカばかりだ。
一緒にいてもつまらない連中ばかりだ。
成績がどうこう、という問題ではない(因みに嘉一は10位前後を彷徨っている)。
存在がバカらしいのだ、つまらないのだ。
だから誰とも喋る事はなかった。
周りから見れば、真面目で根暗だとか思われているだろうが関係ない。
つまらない連中の相手をするほど暇ではないだけだ。
まあ、あんなバカなやつらは生きていても仕方がないだろ?
生き残るべきは…僕だよなぁ?
嘉一は右の方で分けている髪に触れた後、黒渕の眼鏡をクイッと上げた。
そのレンズの奥の目は、殺意に満ちていた。
嘉一が拓也を殺害するところを、誰も見なかったわけではなかった。
実は嘉一から5mほど離れたところに1人の少年がいた。
三木総一郎(男子15番)は今、走ってアパート密集地を抜けようとした。
涙が溢れ、鼻水も垂れていた。
男子で1番小柄で丸っこい総一郎は、転がるように走った。
戎が…戎が稲毛を殺した!
みんなやる気なんだ!!
昨日まで仲が良くても関係ないんだ!!
昨日の友は今日の敵だ!!
総一郎は自分のズボンのベルトに挟んでいたコルトガバメントM45口径を抜いた。
決して使わないだろうと思っていた。
さっきまでは。
しかし、もう誰も信用してはいけない。
何人生き残る事が出来ようが関係ない、信ずる者は己のみ、だ。
親友だった真木頼和(男子14番)も、時々休み時間に一緒に騒いでいた川口優太(男子4番)も信用してはいけない。
嘉一などは論外だ。
目の前で殺人をやってのけたのだから。
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