884:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 08:00:08.98 ID:868/ISGe0
誰だ、あたしを撃ったのは!
水田早稀(女子十七番)の左肩に激痛が走った。
芥川雅哉(男子二番)の叫び声、奈良橋智子(女子十二番)の悲鳴、日比野迅(十五番)に抱き起こされた感覚――全てが自分から遠いもののように感じる程に、早稀の中では怒りの感情が迸っていた。
「こ…の…ッ!!」
あたしに喧嘩売ろうってか、ざけんな、百万年早いんだよッ!!
早稀は昔から騒ぐのが大好きなサバサバとした性格で、家では忙しい両親の代わりに2人の弟の世話をする面倒見の良さもある、今でこそ見た目は少々派手だが恋愛話が大好きなイマドキの女の子だ。
しかし、中等部に入って間もない頃から、喧嘩に明け暮れるようになった。
正確に言うと、喧嘩を売られるようになったのだ。
中等部に入学してからお洒落をするということに目覚めて、髪を赤みのある茶色に染め、派手な色のパーカーを着、スカートの裾を切って短くし、とにかく派手に自分を飾り、人の集まる場所に繰り出すようになった。
特にゲームをやるのも見るのも好きで、ゲームセンターに入り浸っていた。
目立つ容姿に加え名門校の制服に身を包んだ小柄な早稀は、ゲームをし過ぎて小遣いが足りなくなった連中にとっての恰好の獲物だった。
幾度となく裏路地に連れて行かれ、金をせびられた。
当時から気の強かった早稀は必死に抵抗し、時には蹴り、時にはパンチをかまし、時にはその辺に落ちている武器になりそうなもので殴り、1円たりとも渡すことはなかった(当たり前でしょ、あたしのお金は、あたしがお菓子買うためのものよ)。
しかし、一度早稀を脅した連中は仕返しと称して何度も早稀を襲い、早稀は抵抗しているうちに徐々に喧嘩の経験値を積んでいった。
次第に先手必勝という言葉の影響を受け、自分から喧嘩を売るようにもなった。
全身痣だらけになり、学校では恐れられて徐々に周りから距離を置かれた。
今では生活が落ち着き、迅に出会ってからは迅に相応しい女の子になろうと喧嘩をやめ、女の子らしく振舞おうとしてきた。
してきたのだけれど。
怒りの感情に支配された早稀は迅の腕を振り解き、襲撃者がいるであろう方向へ突っ込んでいった。
木と木の間を抜け――人影を確認した。
がぅん、と銃声が響いたが、今回は早稀の髪を数本引き千切っただけに終わり、早稀は怯むことなくその人影に突っ込み、襟首を掴み、押し倒して馬乗りになった。
「あたしのこと狙いやがったな、えぇっ!?
その顔面原型なくなるまでブン殴ってやろ……え…?」
すーっと、血の気が引いていくのが自分でもわかった。
早稀が押し倒した人物の正体に、ようやく気付いたのだ。
「…早稀、柄悪っ」
女子にしては低めで抑揚の少ない声が、早稀の名を呼んだ。
襟足を伸ばした特徴的な黒髪、両耳に光る数多くのピアス、鋭い目の中性的な顔立ち――早稀の親しくしている友人の1人、財前永佳(女子六番)がそこにいた。
「ひ…さか……
……そう、アンタがあたしらを襲って…あたしに怪我させたんだ?」
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