過去ログ - 安価でシークレットゲーム6
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913:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 10:56:57.59 ID:868/ISGe0
 東堂あかね(女子14番)の姿が見えなくなってから、澤部淳一(男子6番)は小さく息を吐いた。そこには、どこか安堵したような響きが含まれている。

 

――ようやく厄介払いできたか。

 

 右手に持ったままの鉄製の定規(あかねの首筋に当てたのはこれだ。本人は刃物の類いと思っただろうが)をポケットにしまい、足下に置いた荷物に細心の注意を払いながら、玄関の方へと視線を向ける。どうやら、宮崎亮介(男子15番)はまだ教室から出てきていないようだ。けれど、もう出てくるのも時間の問題。あかねが一人でいたところから、もう同じようなことを考える輩はいないだろうが、念のためにもう一度ブレザーの左ポケットから端末を取り出して電源を入れた。すぐに画面が明るくなり、画面に星マークが現れる。

 個々がつけている首輪に反応する探知機――それが、淳一に支給された武器だった。画面上だけでは誰であるかは分からないという欠点はあるし、直接攻撃するといった観点から見れば、まったく役に立たない代物だろう。けれど、身を守る上でこれほどありがたいものはない。この探知機の範囲百メートルよりも外から遠隔射撃でもされない限り、不意打ちで殺されることはまずないからだ。だからこそ無事に学校まで戻ってこられたのだし、玄関近くに誰かが留まっていることもすぐに分かった。近づけば、その内の一人があかねであるということも。

 亮介と合流するにあたって、極力別の誰かが入ることは避けたい。そのためには、ここに自分以外の誰かがいてもらっては困る。それに、亮介がまだ教室にいるかどうかも知りたい。そこで、まずはあかねが薮内秋奈(女子17番)と合流できないようにし(複数だと何かと面倒だからだ。それに秋奈はああ見えて頑固なところがあるので)、必要な情報を聞き出した。そうしてから、わざと挑発的な言い方であかねを煽り、正門の方へと行くように仕向けた。ああ言えば、あかねの性格上必ず確かめに行くと踏んだからだ。狙い通りあかねは正門へ行ってくれたし、おそらくしばらくこちらに戻ってくることはないだろう。今も探知機に映し出されている彼女を示す星マークは動いていない。つまり、まだあそこにいるのだ。いや、正確には動けないといったところか。もしかしたら禁止エリアになるまであそこに留まるのかもしれないが、それは淳一の預かり知るところではない。

 

 気になるのは、今も淳一の近くにいるであろうもう一人の存在。その人物は、探知機の表示によれば校門とは反対方向、左手にある建物の影に潜んでいるようだ。あかねがここにいるときから何もアクションを起こさないところからして、仲間を作ろうとしている輩ではないだろう。そして攻撃するつもりもないということは、今も沈黙を守っているところからして明白だ。しかしそれなら、何のためにここにいるのか分からない。もう教室に残っているのは、亮介と最後の出発である槙村日向(男子14番)だけ。亮介と合流しようとしているのは自分くらいしかいないだろうし、日向なら加藤龍一郎(男子4番)や弓塚太一(男子17番)が考えられるが、それにしても単独で待っているのが引っかかる。それに日向を待つくらいなら、あかねにだって声をかけるはずだ。もしかしたら他に何か目的があるのかもしれない。けれど、少なくともわざわざこちらからアクションを起こす必要はないだろう。そこまで考え、淳一は探知機の電源を落としていた。


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