950:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/06(火) 06:30:04.29 ID:D/J1TKXp0
水原翔(男子17番)は空のポリタンクを持って移動していた。
森川達志(男子20番)・朝霧楓(女子3番)・鳥江葉月(女子9番)の3人で全員分の荷物を持ち、土谷和(男子10番)と藁路文雄(男子22番)で中身の入ったポリタンクを持っている。
文雄はそうでもないが、和は足がふらついている。
「…和、やっぱ俺も持つって」
翔はもう何度目かになる言葉を発した。
「怪我人だろ? 気、遣うなって。
つーか、荷物持って咳き込んで…不安になるし。
俺だって運動部員だったんだ、ナメちゃあアカンぜよ」
「アカンぜよって…どこの人だぁ、和」
和も何度目かになる言葉を返す(“アカンぜよ”は初めてだな)。
文雄もつっこむが、どうもいつもの勢いは無い。
それも当然だろう、ポリタンクの重さは半端ではない。
いくら文雄が空手全国3位の実力者だと言っても、気を張り続けなければならないこの状況も手伝って、疲れがピークに達そうとしているのだろう。
「あ、あの… やっぱあたしも…」
「やめときなさい、鳥江さん。
今の荷物の量でふらついてる人に、誰が持たせられるってのよ?」
「ご、ごめんなさい…」
葉月と楓の会話も、これで何度目だろうか?
葉月はクールな楓が少々苦手らしい。
言葉を掛けられるたびにビクビクしている気がする。
翔たちが目指しているのは、先程までいた花屋から見て西にあたるC=07エリアだ。
そう距離は無い。
「…そうだ、翔」
文雄が疲れきった声で言ったので、翔は足は止め振り返った。
「あー…足止めなくていい、早くエリア出たいしな。
あの…飛夕は…説得できなかったのか?
アイツは馬鹿だけどさ…そんな融通の利かない馬鹿じゃないだろ?」
「…できなかった。
『確実に生きる道を選ぶ』…だってさ」
そっか、と言う文雄の表情が暗くなった。
文雄と笠原飛夕(男子5番)は、クラスでは仲良くしていた仲だ。
その飛夕が人を殺そうとした。
正義感が強い文雄にとっては、何よりも許せないことであり、何よりもショックなことだろう。
「…あのさ、もしもまた飛夕に会えたら…ビックリするだろうね。
翔が生きてるんだもん」
ここまで黙々と荷物を運んでいた達志が口を開いた。
翔は自分左胸を何度かポンッと軽く叩き(痛みが走り、咳き込んだ)、苦笑した。
「だよなぁ…
心臓撃ち抜いて、血が出るのも見えたはずなのに、ってな」
「翔くん、血が出たの!?」
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