961:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/06(火) 15:53:27.43 ID:D/J1TKXp0
「どした?
もっかいトイレ行くか?」
桃子は小さく頷いた。
翔平は桃子の手を取って立ち上がらせ、1番近いトイレに入った。
水道が使えないので、水は止められてしまっているらしい。
しかし、トイレのタンクにまだ水が残っているので、1回は流す事ができる。
吐瀉物をそのまま放置するのはどうかと思うので、トイレを使わせている。
1番手前のトイレは既に使ったので、今度は2番目だ。
呻く声を聞かれるのは嫌だろう、と思い、翔平はトイレから少し離れた所に腰を下ろした。
首から提げていた地図の入ったクリアファイルに、ポケットに入れていた懐中電灯の光を当てた。
外の電灯が点いているので電気は通っているのだろうが、急に電気を点けると誰かがいた時に見つかってしまうので、それはできなかった。
その誰か、というのはクラスメイト以外ありえないのに、疑ってしまう自分が少し嫌になる。
「…ま、しゃーないよなぁ…うん…」
自分にそう言い聞かせ、そんな自分に笑いが込み上げた。
結構ビビッてるのかもしれない。
とにかく、今は自分の事はいい。
桃子をどうにかしなくてはならない。
今の状態で嘔吐し続けるのは、胃にもあまり良くないだろうし、精神的にも体力的にもきついだろう。
「桃ちゃーん、大丈夫かー?
歩けるなら保健館に行ってみないかー?
色々薬とかあるかも知んないし、少なくともベッドはあるし。
良かったら1回だけドア叩いてなー」
コンッ、と木の戸を叩く音がした。
「あいよー。
ま、落ち着いたら出てきな、別に急いでねーし」
翔平は立ち上がり、辺りを見回した。
大学の校舎は中学とは全く違うので珍しかった。
○年○組、といった区切りはない。
クラスとかはないのだろうか?
様々な部活やサークルの張り紙が重なって張ってある。
こんなにも種類があるのか、と感心する。
「桃ちゃん、俺ちょっと1階見てくるから、待っててな」
そう言い残し、翔平は階段を降りた。
1階にもたくさんの張り紙があった気がしたので、興味が湧いた。
それだけだった。
1階に下り、別のものに興味が湧いた。
半開きになった扉。
人気はない。
あ、もしかして、前の口論ってここでやってたのかな?
ドアくらい閉めとけっての、なんか半開きって怖いじゃん…
閉めようと近づき――見てしまった。
誰かが、倒れている。
「お、おい…っ」
翔平は勢いよく中に入った。
中の光景に、力無くへたり込む。
「モッチー……多田っち……っ」
目の前に倒れているのは、小柄で可愛らしい少年だった持留奏太(男子16番)――今は首がさっくりと裂け、顔を血溜まりに埋めている。
その奥にいるのは、頼りになる兄のような存在だった多田尚明(男子11番)――頭部を奏太と同じように血溜まりに埋めているが、ぱっと見たときに傷は確認できなかった。
2人は確か幼馴染だったはずだ、自分と桃子のように。
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