過去ログ - 安価でシークレットゲーム6
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982:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/06(火) 16:24:41.48 ID:D/J1TKXp0
山北はもう一度名前を呼んだ。

「いくら君と局長が幼馴染とはいえ、ここは仕事の場。その態度はいけないんじゃないのかな?」
「…あぁ、だったらアンタも座ればいい」
「そういう問題じゃないだろう」

山北と天方の言い争いが始まった。それは熱い戦いというわけではないが、明らかに火花が散っている。

「あーあ、また始まっちゃいましたねぇ」

いつの間にか背後に来ていた岸田が溜息混じりに言った。その顔には、『局長が止めてくださいよ』と書いてある。2人の間に割って入るのは簡単なことではないが、仕方がない。

「2人共、その辺で――」
「まーたやってんスか、お二方!」

妙に大きな声が室内に響いた。その声に、遠藤は顔をほころばせた。

「おぉ、右之か」
「やめようぜぇ、こんな所でよぉ!」

あっけらかんとした声とごつい顔、それはとびっきりのムードメーカー、原田右之助(はらだ・うのすけ/軍人)のものだ。原田は山北と天方の間に割って入り、互いを宥めた。その姿に毒気を抜かれたのか、天方は諦めて、ソファーに行儀良く座り直した。

「助かったよ、右之」
「いえいえ、お安い御用ですとも」

原田はニカッと笑った。本当に助かった、余計な労力を使わずに済んだ。原田の後ろにいた永倉古八(ながくら・こぱち/軍人)は、パソコンに向かっていた2人の男の側に行き、肩を叩いた。

「斎藤さん、凸助、見張り交代の時間だ」

2人の男の内、やや幼さの残る藤堂凸助(とうどう・とつすけ/軍人)が先に振り返り、「わかりました」と立ち上がり、永倉の持っていたライフルを受け取った。そして、横にいるどことなく気だるそうな男、斎藤万(さいとう・よろず/軍人)に声を掛ける。斎藤はゆっくりと立ち上がり、原田から同じようにライフルを受け取り、凸助と共に部屋を出て行った。

「…私も少し暇を頂きます」

山北は遠藤に向かって一礼し、部屋を出て行った。居心地が悪いというわけではなく、単に交代に取っている仮眠の時間が、山北の番になったからだろう。書類を書き上げている途中で、テーブルに置いていた電話が鳴った。遠藤は慌てて受話器を取った。

「はい、こちらプログラム本部…あ、これはこれは、お世話になっております、はい。え、はい、それはもう順調ですよ、7人退場しまして、はい。…え、山神ですか?彼は1人殺ってますね、やる気十分ですよ。…あ、野原?野原は別行動ですね、今は女子5番の大谷と行動しています。……えぇ、そうです。あぁ、でも思ったより良いですよ、並の男より男気ありますし。……ははっ、そうですそうです、はい。…はい、はい、はい…あ、はい、お疲れ様です」

遠藤は受話器を置いた。そして、大きく息を吐いた。

「…どこぞのお偉いさんからかい?」

天方が訊いた。山北がいなくてよかった、今の発言は必ず咎めるだろうから。

「あぁ、国交省の副大臣だ。トトカルチョで山神と野原に賭けてるらしい」
「トトカルチョ…あぁ、例の」

中学3年生の子供たちが命懸けで行う椅子取りゲームで、国のお偉方が誰が優勝するのかという賭け事をしていることは、こちらの世界では有名な話だ。天方が知っているのも当然の話だ。噂では、1回のプログラムで億単位の金が動くという。

「ねぇねぇ、土方さん!」

遠藤の後ろにいた岸田が声を上げた。それは新しいおもちゃを見つけた子供のような、弾んだ声だった。

「俺たちもしませんか、トトカルチョ!…焼肉喰い放題を賭けて!!」
「乗ったぁっ!!」

1番に声を上げたのは、原田だ。祭り事の好きな原田らしい。その横では永倉も笑みを浮かべている、やる気らしい。

「…って言ってるけど、どうする、遠藤さん」

天方が意見を仰ぐ。しかし、その瞳は既に勝負師のそれだ。訊いているが、やる気十分のようだ。遠藤は溜息を吐き、やれやれ、と呟いた。


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