過去ログ - 伊織「さようなら」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2013/03/12(火) 20:36:44.63 ID:fz9LGbgw0

その日から、新堂は言葉通り私の前に姿を見せなくなった。
これも自分が招いたことなのだから、しょうがないわよね。
でも、そのおかげで私は自分を知ることができた。

そして、改めて考えることが出来た。本当に自分が持っているものは何か、ってことを。
まずは私の身体。産んでくれたんだから、当然よね。私の肌、髪、顔。
これに関しては、たった1つ、私が生まれながらに持ち得て、受け継がれたもの。
正直、気に入ってるわ。尊敬するパパとママに、そっくりなんだもの。

他にも、美術・工芸品の価値、真贋を見極めるだけの知識、眼力…そういうものを持っていた。
パパやママがよく集めていたりするから、どういうものが本物かを見極められる。
それに近いものとして、センスがよかった。ファッションから、何から何まで。

あとは、学業にも秀でている。新堂が、家庭教師の代わりをしてくれていたから。
おかげで勉強には困ることはなかった…何もしなくても、1番を取るほどには。
けど、こうなってしまった以上、もう新堂には頼れない。これからは、自分でなんとかしなければ。

そこまで考えをまとめた私は、次を考えることが出来なかったの。
私が本当に持っていたものは、それだけだったんだから。

何か目に見えるものとして存在していたのは私の学業成績だけ。
ありとあらゆるものを集めてみたけれど、ダンボールに一箱分にもならなかった。
愕然とした。私の十数年の人生で目に見える成果が、ダンボール一箱分以下だったなんて。

私は今までしてきた事を思い出した。
我欲を満たし、存在を承認してもらうための日々だった。
ただ、認めてほしかったのかも。裏を返せば、少し寂しかったのかもしれない。




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