過去ログ - 1~2レスで終わるSSを淡々と書く
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14: ◆WoKACJPFC.[sage saga]
2013/03/15(金) 18:28:07.76 ID:JLyRmb8y0

私たちは、季節の変わり目を旅行している。

旅行と言っても、計画をしていた訳ではない。
突然というか、唐突というか、気まぐれというか、そんな感じである。
期末テストが終わり、私たちはいつもの喫茶店で羽を伸ばしながらだらだらとしていた。

「ねぇ。どこか行きたいね」

「どこってどこよ」

「そりゃ…どっかだよ」

そんな不毛な会話は2時間近く続き、マスターの眉間が露骨に帰れと主張し始めたので、
私たちはわからないどこかを目指し、外を散策することにした。

通学路から2つほど道に逸れて、いつもとは違う道を歩き、私たちは駅を見つけた。
この町に生まれ育った私たちが知らない駅、聞いたことも見たこともない。
冗談半分で壊れた切符販売機?で切符を買う。予想外だったがしっかりと起動していたようだ。

春夏秋冬行き

切符には子供がクレヨンで書いたような行き先が書いてあって、私たちはけらけらと笑った。
ついでだから、少し待ってみようかとホームに立って数分後。
電車が来た。

お菓子のような外見。
少々の不安もあったが好奇心には勝てない、私たちはこうして季節の旅を始めたのだ。


春は文字通り春であった。
最初、桜でも咲いてある地に行き、停車して観光でもするのかと思ったが違った。
電車の中、この4畳半より少し大きいスペースが春になったのだ。
吊革に鶯が止まり鳴き出し、荷台から桜が咲き始め、私たちはたちまち花粉症になった。

夏は文字通り夏であった。
天井にある蛍光灯は燦々と輝き始め、スピーカーからはやかましく蝉が鳴る。
ふと外を見てみると、映画にでも出てくるような青い海が広がっていた。
私たちは窓を全開にして夏の甘ったるい、ごうごうとした風を全身で受けた。

秋は文字通り秋であった。
ソファがゴソゴソし始めたと思ったら、落ち葉に変わり自然のソファになった。
手すりをリスが駆け上がり、さっきまでの夏の風が爽やかな物悲しいものへと変化していく。
私たちは鞄の中に入れてあった本を取り出し、秋の読書と洒落込んだ。

そして、今。私たちは冬の中にいる。
秋に開けて置いた窓から雪がぶわりと入り込んでくる。
急いで閉めようかと両手で窓を閉めようとするが、ピクリとも動かない。
しまった。徐々に視界が暗くなってきた。
私たちは、電車の中。がたんごとんと揺れながら、

冬眠のため長い長い眠りについたのであった。



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