過去ログ - 1~2レスで終わるSSを淡々と書く
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32:1/1[sage saga]
2013/03/15(金) 20:26:53.53 ID:JLyRmb8y0

大好きな固焼きせんべいを食べていた時のこと。
ふと、じゃりじゃりと不思議な感触がして気づいた。
下前歯が欠けてしまったのだ。

「こいつは、どうしたものか」

私は途方に暮れてしまった。
なぜかと言うと、私の下前歯が非常に美味な味わいをしていたからだ。
長年、有名ラーメン屋として名声を得てきた私は驚愕してしまった。
まさか、私自身が最も優れた具材らしい。

思えば、ラーメン屋が有名になったきっかけもそうだった気がする。
夫と喧嘩して、泣きながら作った味噌ラーメンが賞を取った。
真夏に汗をダクダクと流しながら作った豚骨ラーメンが特集された。
くしゃみをしてしまった後の塩ラーメン。
私は急いで夫の元に走った。

「ねぇ私、とてもいいダシが取れるみたいなの」

「おう。いまさら知ったのかい」

「どういうこと?」

「俺は、お前と一緒にこの店始めてから、シャワーしか浴びたことがない」

「え?いつもお風呂沸かしているじゃない」

「いいダシが取れるんだよ。これが」


売り上げが伸びるたび、私は罪悪感でストレスが溜まり続けた。
そして、幾日か過ぎたころ。

「おい。なんだこの不味いダシは」

「知らない」

「あれ。お前痩せたのか」

「うん。ストレスでちょっと」


体重が2キロ痩せると不味くなり、2キロ増えるとうまくなるらしい。
私は、夫と別れて店を畳んだ。

女は体重には勝てない。


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