過去ログ - 春香「これからのきみとぼくのうた」
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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/03/16(土) 11:31:21.45 ID:bwJZNukvo
キィ......
キィ...
ブランコの勢いを緩めて、陽の傾いたオレンジの空を見上げる。
雲が夕陽に照らされて焼けていた。
「なにがあったんだ?」
「……」
あげはから詳しく聞いていないのかな。
それとも、私の口から聞きたいのかな。
私は右腕を伸ばして空の向こうを指差す。
「旅立っていきました」
「……」
人差し指が震えたので、そっと下ろす。
「私たちの、とても大切な人が」
「…………そうか」
いつもと変わらない口調で、いつもと同じ声で先生は応えた。
「……」
「私たちってことは、いつも聞いていた、事務所の人か?」
「…………そうです」
「……そうか」
私がアイドルとして名前が売れ出した頃。
事務所の中でイマヒトツ魅力を表現できていないと感じていた私。
そんな――どっちかというとごく普通な――私をアイドルとしてステージに立てるのは彼の力が大きいと、単純にそう考えていた。
アイドルの私をもてはやすクラスメイトたちにそれを伝えるには彼の存在を示す必要があった。
その時はみんなから謙遜だなんて言われたけど、彼の努力を蔑ろにされない為にも一生けん命に伝えた。
そしたら、想い人にされてしまって、それを否定したいけど、否定もできなくて。
色々と誤魔化す為に必死に混乱した言葉で伝えていたのも、いい思い出になった。
いい想い出……だったのに……いまは…………胸が痛い。
「私ってバカですよね」
「……」
先生は黙って、隣のブランコに腰を降ろす。
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