過去ログ - 春香「これからのきみとぼくのうた」
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47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/03/17(日) 21:15:27.64 ID:H1WPBXuto
「春香がアイドルを志した原点と似ているな」
「?」
「魅了する側と、魅了される側」
「あ……そうですね」
私は小さい頃、近所の公園でよく歌を歌っていたお姉さんと一緒に集まってきた人たちの前で歌ったことがあり、
それを褒めてもらった経験がアイドルを志した原点となっている。
「彼女のこと覚えてるか?」
「はい、プロデューサーさんの初恋の人ですよね?」
「……そういう覚え方されると困るけど、そう、その人」
「……」
彼の記憶を辿るのも好きだった。
「俺がこの仕事に携わりたいと思ったのは、とある『アイドル』がいたから、というのは話したな」
「……はい」
車の中で、隠れている真美と一緒に聞いた話。
それは彼が中学生のとき。
テレビで明るい笑顔で歌って踊る『アイドル』を見て、魅了されたと聞いた。
「そのテレビを見ている時、彼女も一緒にいた」
「……」
「食い入るように見ている俺に、『好きなのか、そのアイドル』と聞く」
「……」
「俺はその時が初めてだったから、『知らないけど、なんか凄い』と、輝いている姿を見つめていた」
「……」
「そして、ちょうど彼女が日本史の勉強をしていたところ。天保の改革、歌舞伎の話が出てきて」
『演じる者、それを鑑賞して楽しむ者。伝える側と受け取る側の両方があって生まれるモノ』
「という、彼女のご高説を承ったわけだ」
意地悪なことを言いつつも、その表情は寂しそうだった。
その日の、その時の彼はとても寂しそうだった。
「俺はその『アイドル』の明るくて素敵な笑顔をみて、何かが変わった」
「なにかが……?」
「そのなにかは俺にもよくわからない」
彼は遠い記憶を思い出そうとしていたのかもしれない。
寂しそうに笑ったのは、忘れて思い出せなかったからなのかもしれない。
私は彼のことをよく知ることができなかった。
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