過去ログ - 智「さあ、おとぎ話をはじめよう」 Re:3
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名無しNIPPER
[saga]
2015/06/30(火) 01:04:00.88 ID:v1l6gevwo
「ええ。私によく似た、可愛い可愛い、私の姉弟」
その眼にはやはり私は映っていない。
その兄弟……恐らくは弟か妹を思い、想って、焦がれている、恋慕に近い瞳。
「時間がないの」
それは、さっきまでとは打って変わって酷くはっきりとした言葉。
「私はもうすぐ、どうしようもないくらいに壊れて、壊されてしまうわ」
「だから、貴女に私の姉弟を守ってほしい。守らなくてもいいわ、出会った時に気にかける程度でも構わない」
『ただ、その代わり』
『それをしてくれるというのなら、私は』
その先は、言われなくてもわかる。
死が見える、導けるということは即ちその逆――生かすことも可能だということ。
これは、対等な取引。
私の大切な存在を守る代わりに、こちらもそちらの大事な肉親を守ってほしい。
ただそれだけのものだ。
そして、私にとっての暁人には、それに答えるに十分値するだけの価値がある。
「お前、名前は?」
「和久津。和久津真耶」
「和久津、覚えたぞ。もし約束を守らなかったら、私が直々にお前を殺しに行く」
「う、ふ、ふ、ふ、ふ」
再び、これ……和久津は嗤った。
その眼には既に、先ほどまではあった理性の欠片は見つからない。
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