138:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:01:25.17 ID:7LnCOhGJ0
再び、雪歩の体が震え始めた。
今度の震えは、悲しさからではなく恐怖によるものだった。
自分のせいで、プロデューサーを大変な目に遭わせてしまった。
彼を慕っていたアイドルの皆から、どれほどの非難を浴びせられるかを雪歩は想像した。
「雪歩」
急に美希から声をかけられ、雪歩の体は大きく跳ねた。
「プロデューサーはきっと平気なの。大丈夫、落ち着いて」
そう言って、美希は雪歩の肩に手を添えた。
そうだ、彼女はまだ真実を知らないのだ。
自分のわがままのせいだと知ったら、彼女は何と言って自分を責めるだろうか。
そう考えると、雪歩は何も言うことができなかった。
「ねぇ、そうでしょ? プロデューサー、大丈夫だよね、律子? ――さん」
律子の方へ向き直り、美希は笑顔で問いかけた。
無理に表情を作っていると分かってしまうのが、律子にとっては余計に辛かった。
律子は、何も答えることができず、黙って俯いた。
「何で黙るの? ほらほら、何かこう、ワーッ! ってさ。
湿っぽいのは苦手なの。笑顔笑顔、ねっ?」
「こんな時に、笑っていられる訳ないでしょう!」
雪歩は、そう言って律子に怒鳴られる美希の顔を見た。
彼女の瞳が潤んでいるのを見て、雪歩は美希が不安と悲しみを必死に殺して皆を元気づけようとしていることを理解した。
美希ちゃんに、これ以上無理をさせることはできない。
「律子さん―――社長も、小鳥さんも、一度、外に出ましょう」
恐る恐る、雪歩が律子達に、美希を残して部屋の外へ出るように提案した。
突然の提案に大人達は少し困惑したが、頭を下げる雪歩を無下に扱う事はできず、止む無く了承した。
雪歩は、部屋のドアノブに手をかける前に、チラッと美希の方を見た。
美希は、小さく頷いていた。
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