9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/27(水) 21:26:28.08 ID:6exIizRr0
◆
突然、家を知らない男が出入りするようになった。
それは本当に突然のことで、私ははじめ、いなくなったはずの父親が帰ってきたのかとすら思った。(父の顔もその素性さえも知りはしないけれど)
この間、姉の様子がおかしかったのはこういうことだったのか、と。
私は、理解した。
あのとき「あのね」と姉が私を呼び止めようとしたのは、きっと彼ができたことを私に伝えるためだったのだ。
妹「ただい――」
今日も。
その男が家に来ていた。
今日は私が委員会で少し遅くなったとはいえ、普段は私より少し後に帰ってくる姉も、もちろんいた。
姉「あ、おかえり!」
玄関に並べられた男物の靴を、じっと睨みつける。
私に気付いたのか、リビングの戸が開き姉が顔を出す。
私はそれを無視して靴を脱ぎ捨てると、ずんずんと歩いて自分の部屋に入った。乱暴に戸を閉めてやると、ようやくイライラしていた心が少し落ち着いた。
姉はいつまでも彼のことについて話したがらなかった。
それは、私が聞かないからだったのかもしれない。
それでも、姉があえて彼の話を避けているのは明白だった。
聞こうかと思った日もあった。けれど、そのたびに私は口を開くことができなくなる。
「あの人は、なんなの」
そう言った途端に、姉の答えが、私の中のなにかを、壊してしまいそうな気がしたのだ。
だから、訊ねられなかった。
11Res/8.72 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。