49: ◆GorJQ6qPNeO8[saga]
2013/04/27(土) 01:34:14.45 ID:w6C+9a2YO
〜〜〜
――あと、ひとつ。あとアウトひとつで試合は終わりだ。
帽子をかぶり直す。
――……なんだろ、夢のせいかな。少しだけ今日は調子いい。
大きく腕を回し、キャッチャーミットめがけてボールを放つ。
そのボールは打者のバットをくぐり抜け、気持ちのいい音を響かせながら狙い通りミットに収まった。
「ストライク!バッターアウト!」
アンパイアの掛け声に、チームメイトがよって来る。
「咲!調子良かったじゃない!」
「なんか、大学時代の咲さん思い出しましたよ!」
――……足りない。
どれだけピッチングを褒めてもらっても、私が聞きたい声は聞こえて来ない。
夢はやはり夢なのだと、今更思い知らされる。
どんなに幸せだった時を思い出しても、それは所詮過去なのだ。
「……私、舞がいないとダメなんだ」
「え?」
ぼそりとした呟きをチームメイトたちが聞き返して来る。
「……ううん、なんでもないっ!
本日は絶好調なりぃー!って感じのピッチングだったでしょ?
今年は去年のような醜態晒しませんよ!」
作った笑顔でそう言う。
大学を出てから出会った人の前では作った笑顔しか、出来なくなっていた。
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