70: ◆GorJQ6qPNeO8[saga]
2013/05/06(月) 02:17:00.39 ID:qFNYi67to
〜〜〜
「大学、か……」
なぎさが帰ると、私は今日話題に上がった進学の事をぼんやり思い起こしていた。
いっそのこと、両親のいるパリへ行ってしまおうかとも考えた。
近くにいるのに会えない事ほど辛いことはないと知った。
でも、なぎさのいない場所に行く勇気は私にはなかった。
例え、会えなくても同じ場所に居たいと思った。
そんな事を考えていたら、急に怖くなってきて、いても立ってもいられなくなった。
「……っ!」
私は傘も差さずに家を飛び出した。
時間は何時かわからない。
おそらく、十時とか十時半とかだろう。
雨は昼間よりも勢いをまし、私はすぐにずぶ濡れになる。
それも気にせず、ひたすら走る。
目的地ははじめから決まっている。
息を切らせながら、必死に走る。
そして、やっと、たどり着いた。
「な、ぎさぁ……」
たどり着いた場所はなぎさの住むマンションのロビー。
髪から、袖から、全身から雨水を滴らせ、私は美墨一家の住む部屋を目指した。
しかし、階段を登っている途中に頭が冷えた。
こんな時間にインターホンは鳴らせない。
なぎさだってきっと寝ている。
部屋の前で立ち尽くす。
この扉が、私となぎさの間に今ある壊せない壁なんだと実感した。
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