過去ログ - フィアンマ「病室を、間違えていないか」ヴェント「ッ、」
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6: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2013/04/06(土) 20:04:27.79 ID:01/4WOYt0

彼はそのまま、私の隣を通り過ぎる。

「あ、」

声を出して、引きとめようとした。
泣いていたせいで声が掠れ、発声に齟齬が生じる。
掠れた声はどこにも届かず、雨音にかき消され。
そうこうしている間に、彼は姿を消した。
ふらふらと立ち上がり、周囲を見てみるも、見当たらない。

「……、…?」

バチカンは、私の庭のようなものだ。
住んで、もう二年になる。
だというのに、見当たらないというのは妙だ。
全力ダッシュしたとしても、後ろ姿位は見える筈。
首を傾げ、ハンカチを見下ろす。
雨で濡れているものの、清潔そうな赤いハンカチだった。
男性用でも女性用でもないのか、華美さも地味さも無い。

「………」

次に会った時には、返さなければ。
思いつつ、ポケットへとしまいこんだ。


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