過去ログ - 奈緒「風邪をひいた日のこと」
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9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/08(月) 22:18:05.86 ID:ct387MSPo
「……後は、また眠りなさい。しばらくすれば、他の子も来るわ」
「ええと……のあさんはもう帰るんですか?」
「今日はオフ、だから……次に起きるまでは、貴女の隣にいるつもり……。
 待っていれば、彼も、来るでしょう」
「そっか。……プロデューサー、来るんだ」
「……来ないはずがないわ。……そうでなければ、彼の下にいることはないもの。私も、貴女も」

 そうなのかな。
 だったら、うれしいよな。

「……あのさ、のあさん。変なこと訊くけど、いいか?」
「……答えられる問いを、示しなさい」
「アイドルしてて、自信なくしたこととか、ある?」

 アタシの唐突な質問に、しばしのあさんは口を閉ざした。
 それからいきなり、すっと顔を寄せてきた。

 鼻先三十センチ。
 その差も縮まり、こつん、と額が触れる。
 自分の熱さとのあさんの冷たさに、吐息が漏れる。
 やがて離れて、何事もなかったかのようにのあさんは元いた位置に戻った。

「……私は、上を望んでいる。遙か高み、空に咲く星のように……けれど、それは独りでは決して届かない。
 ……不足を埋める存在が、共に羽ばたくための翼が……私には、なくてはならない」
「……んん?」
「貴女の下へ私を導いたのも……今も貴女のことが不安で、心を曇らせているのも……
 どちらも同じ、私が求める、彼。……羨ましく思うのは、自然でしょう」
「えっと、つまり……のあさんは私が、羨ましい?」
「……言葉にすれば、無粋なことも……世界には多くあるわ」

 どこか拗ねたような響きに、アタシの頬もそれこそ自然に緩んだ。
 まあ、そうだよな。
 逆だったら絶対、アタシも羨ましい。

「……熱は、おそらく次で下がるわ」
「ん、じゃあアタシは寝ます。冷蔵庫の中身とか食器は、自由に使ってください」
「ええ。……おやすみなさい」

 誰かがそばにいる。
 そのことにあたたかさを覚えながら、アタシは眠りに就いた。

 今度は深く、夢も見なかった。


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