1: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:12:49.29 ID:6wmlhGt00
真っ暗な夜の事だった。見上げてみると
星が降ってきそうな満天の夜空が広がっていた。
『見ろよ桐乃』
『え?どれぇ?』
『あの星だよ』
『あのさんかくの?』
『そうそう。あれ、オリオン座っていうんだぜ?』
『へぇ〜、そうなんだぁ!』
『しかも冬にしか見れないんだよな』
『お兄ちゃんはなんでもしってるね!』
『当然だろー!俺だからな!』
『うんっ!』
これはあたし達の昔の記憶。
子供の頃はよく一緒に遊んでは
こんな風に夜空を眺める事もあった――。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:13:48.16 ID:6wmlhGt00
「…………夢、か」
珍しく懐かしい夢を見た。
あれはまだ、あたしと兄貴が小学生だった頃の話。
ちゃんとした“兄妹”だったあたし達。
3: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:14:30.42 ID:6wmlhGt00
――あたしの憧れだった兄貴は、いつの日からか
ただの平凡な人間に変わり果てた。
そんな兄貴をあたしは蔑み、遠ざけ、嫌いになった。
それを境に他人のような関係になる。
4: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:15:18.16 ID:6wmlhGt00
「ん〜……」
再び目が覚める。時計を見ると
昼の時間はとっくに越えていた。
5: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:16:01.35 ID:6wmlhGt00
「あれ?いるじゃん」
部屋に入ると、一人黙々と机に向かっている京介がいた。
「ちょっとあんた!なにシカトしちゃってくれ……っ!?」
6: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:16:45.95 ID:6wmlhGt00
「…………」
カチッ カチッ
「…………」
7: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:17:22.73 ID:6wmlhGt00
「よっしゃ!トゥルーエンド!」
「……オ、オメデトウ……」
「えっ?」
8: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:17:57.71 ID:6wmlhGt00
「…………」
およそ数秒。
わずかの間を持って京介は切り出す。
9: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:18:28.19 ID:6wmlhGt00
「冗談だって」
「そうだとしても、やっぱこう、なんだろ……」
激しく落ち込んでいる。
10: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:18:58.12 ID:6wmlhGt00
「…………で、なんでここなんだ?」
「えと、なんでだろね?」
「お前が言い出したんだろーが!」
11: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:19:33.37 ID:6wmlhGt00
「うっさいなぁ。たまにはいいじゃん?こーゆーの」
「ま、まぁ、確かにそうだが……」
「たまにはこう、話でもしよっか?」
12: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:20:05.91 ID:6wmlhGt00
――こいつはあたしのせいで
せっかく出来た彼女と別れている。
その彼女は、まぁ、あたしの親友でもある。
表面上では頭のおかしい発言が多いやつだけど
13: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:20:39.19 ID:6wmlhGt00
「…………」
「どうかしたか?」
「…………」
14: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:21:06.05 ID:6wmlhGt00
いつからだろう?京介が気になるようになったのは?
いつからだろう?京介を追いかけるようになったのは?
きっかけはあたしの人生相談。
でもこの気持ちをいつ抱いたのかは分からない。
15: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:21:45.25 ID:6wmlhGt00
『普通の兄妹に――――なりなさい』
あたし達の幼馴染に言われたこの言葉。
今になって、胸に突き刺さる。
この想いを告げた時、必ず不幸になる人がいる。
16: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:22:13.02 ID:6wmlhGt00
「お、おう、ど、どういたしまして」
「動揺しすぎでしょ?あんた」
思わず吹き出してしまう。
17: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:22:40.65 ID:6wmlhGt00
「もうこんな時間か」
「真っ暗になってんね」
「そろそろ帰るかぁ」
18: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:23:30.57 ID:6wmlhGt00
「なあ、桐乃?」
「なに?」
「さっきさ、俺に礼をしてきただろ?」
19: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:23:59.04 ID:6wmlhGt00
「……懐かしいな」
「……え?」
「覚えてるか?桐乃」
20: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:25:14.15 ID:6wmlhGt00
「あぁ。ガキの頃、よく見てたよな?」
「あ、あんた、覚えてんの!?」
驚いた。そんな昔の事、覚えてたんだ。
21: ◆HlJ8.vc/wE[sage]
2013/04/11(木) 02:25:51.24 ID:6wmlhGt00
でも京介はきっと、あたしを妹だと認識している。
それが普通で当たり前なんだけど……。
「最近、よく思うんだけどさ」
115Res/59.04 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。