411:たんぽぽ ◆gijfEeWFo6[saga]
2013/04/28(日) 01:32:41.53 ID:7G+wO0VV0
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「新しいプロデューサーさんってさ……何か、壁を作ってるよね」
ずっと一緒にいると薄々感じ取れる事だった。プロデューサーは私達をどこか拒否しているような雰囲気がある。断言なんて出来ないし、根拠も無いけど。
「あー、分かるな、それ。あたし達を避けてるとか、女との会話を恥ずかしがってるとかじゃなくて……なんつーか、上手く言葉が見つかんないな」
奈緒の言いたい事は分かる。プロデューサーは何だか、私達にまったく興味を持っていないように感じた。仕事こそちゃんとしているけど。
「壁云々以前に私だけ嫌われてるような気がするんだけど……なんで?」
私は悩みを疑問に変えて二人に問いかける。
「そういやそうだな……何かやったのか? 悪口言ったとか、態度悪いとか」
「態度は悪かったかもしれないけど、別に悪口とか言ってないよ」
態度は確かに悪いかもしれないけど、悪口なんて言うわけない。
「あれじゃない? 凛に一目惚れしたとか……」
「ないでしょ。それだったら普通に接してくると思うし」
いっその事一目惚れとかの方がまだよかったって思うのはダメかな……。
「凛の事を嫌ってるって言うか、何か苦しげな表情で見てる時あるよね」
「あたしも見たなーそれ。凛が何かやらかしたのかと思ったな」
「何もやってないってば……」
本当に、何もやってない。
「って、噂をすれば、あそこにいるのプロデューサーじゃない?」
加蓮が指差す方向には、確かにプロデューサーがいた。似ている人とかではなく、本当にプロデューサーだ。
――だけど、私は目を疑った。
プロデューサーは、確かにいた。
……でもプロデューサーは、四人の小さな女の子と、そして、同じアイドルである美嘉と一緒にいたのだ。
それに……プロデューサーは……。
……遠目でも分かる。プロデューサーは笑っていた。
仕事場では絶対に見せない、幸せそうに笑うプロデューサーを、私は当分の間は忘れる事ができないだろう。
プロデューサーの横に美嘉が寄り添い、その後ろに小さな女の子達が続く。
かなり若いけど、それはまるで子連れの夫婦のようだった。
不意に、胸に小さな痛みが走った。
その痛みの理由を私は知らない。
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