過去ログ - のあ「……たいせつなものは、目に見えない」
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3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/18(木) 22:34:28.71 ID:Sxr2n2vlo
「あ……の、のあさん……こ、こん、ばんは」
「……こんばんは、小梅」

 無表情のままの挨拶返しに、一瞬小梅はびくっと肩を震わせたが、
 一応安心したらしく、流し場へ向かうのあの後を追いかけた。
 ポットの電源を点け、棚から茶葉を取り出したのあは、手際良く急須に適量を入れる。
 彼女の正面、お盆の上に並べられた湯呑み茶碗はふたつ。

「……仕事は、終わり?」
「は、はい……さっき、プロデューサーさんに、車で送ってもらって……」
「貴女……女子寮、だったかしら」
「あとで、また……む、迎えに来るから……て」
「そう……なら、しばらくは、ここにいるのね」

 やがて、ふつふつと旧式のポットが鳴り始める。
 急須に湯を注ぎ、しばし蒸らしてから、のあはお盆を持ち上げる。
 結局手伝う隙もなく、今度は休憩室へと歩いていくのあの背を、小梅は申し訳なさげに再び追った。

「……今更だけど……お茶は、平気?」
「だ……だいじょうぶ、です」
「……どうぞ」

 先に腰を下ろした小梅の前に、のあが受け皿に乗せた湯呑み茶碗を置く。
 器の七割ほどを満たす液体は、透き通った薄い緑の色だ。
 手指の隠れた袖で器用に両手持ちをし、控えめに口付ける。
 唇を濡らした茶は熱かったが、まだ子供舌な小梅にとって程良い苦さだった。
 ほぅ、と一息吐くと、いつの間にか隣にのあも座っている。
 片手にはカバー付きの本。
 細い指先が少しこなれたページを開くのを、小梅はじっと見つめていた。


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