7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/23(火) 08:35:50.86 ID:KvXHbuyeo
憂「……元々、紬さんがしたいという事自体に何か言うつもりはありませんでした」
紬「この前も、憂ちゃんはそう言ってくれたね」
憂「お姉ちゃんの幸せは、私の幸せです。紬さんのことも私は好きですから、二人ともが幸せになれると言うのならそれでいいと、今でも思っています」
紬「ありがとう」
憂「……でも、みんなが――和ちゃんも梓ちゃんも純ちゃんも、お父さんもお母さんも、みんなが――言うんです。私は何か言うべきだ、って」
紬「………」
憂「形だけでも異を唱えておくべき、ということなのかもしれません。私からお姉ちゃんを奪う紬さんに対して」
奪う、と言ったものの、その表情はとても穏やか。
わかってる。この姉妹は私達が思っているよりずっと自立していて、そして私達には想像すらできないほどの絆で繋がっているから。
だから、奪う立場である私のことも祝ってくれる。姉妹の絆を案ずる必要が全く無いから、そのぶん他の人のことを祝福してくれる、と言ってもいいかもしれない。
でも、そのことは私でさえわかるのに、私より付き合いが長いであろう人達は憂ちゃんに何かを言わせようとしている。
そのことがどうしても腑に落ちない。だから、私は何も言えない。
憂「だから、とりあえず形だけ言わせてもらいます。……いいですか?」
紬「うん、大丈夫」
憂「……紬さんは、お姉ちゃんを一生愛せますか? 幸せに出来ますか?」
紬「……絶対に。誓ってでも」
山の方で、群れを成すカラスが大きく鳴いた気がした。
憂「………何があっても、お姉ちゃんを守れますか?」
紬「………」
前の二つとは違い、その言葉に即答することはできなかった。
……というか、言葉に詰まった、と言った方が正しい。
それなのに憂ちゃんの表情は穏やかなままだったから、私はどうにか「守りたい」とだけ言い切ることが出来た。
憂「大丈夫です。こんな時間にこんな場所でこんな話をしてて、それでも今の問いに即答するような人だったら逆に信用できませんよ」
あまりの見透かされっぷりに、少し居心地の悪いものを感じる。
こんなにも物悲しくなる夕焼け時に。
こんなにも綺麗なものだけ見える場所で。
こんなにも、人生を左右する大事の話をして。
そんな私が、未来を楽観なんてできようか。
未来では何が起こるかわからないのに、何があっても守れるだなんて断言できようか。
唯ちゃんを愛する。唯ちゃんを幸せにする。それは私の『心』で出来ること。それなら私は断言できる。この想いは一生揺らぐことはないから。
でも、守るとなると話は別だ。残念だけど、すごく残念なことだけど、そればかりは気持ちだけじゃどうにもならない。
そのあたりの女の子よりは腕力はあるし、いざとなれば家に頼るという手もあるけど。それでも唯ちゃんを傷つけかねない全てのものに先んじることが出来る、というわけではない。
そんなの……イヤというほど知っている。
困難や苦労を乗り越えることを強いられ、七回転んでも起き上がることを強いられ、あまつさえ若い頃にはお金を払ってでも苦労しろと言われる、こんな世界なのだから。
そんな世界で、愛する人を「守れる」と断言できない私に言えることは――
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