9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/04/23(火) 08:37:26.11 ID:KvXHbuyeo
そう言って、笑い合う。
こうやって笑い合えるのが何よりも嬉しい事だというのは充分わかっているつもりだ。
私は唯ちゃんの味方で、唯ちゃんは私の恋人で、そんな私と唯ちゃんの仲間として、こんなにいい子がそばにいてくれる。
もちろん憂ちゃんだけじゃないんだけど、学年も違い、部活でも一緒にならなかった子がこんなに近くにいてくれることって嬉しくも不思議だと思う。
でも、人との縁ってそういうものなのかもしれない。
大人になった時に誰との関係が続いているかなんて、小さい頃は予想も付かなかった。
当然だけど、だからこそ嬉しくも不思議なんだと思う、誰との縁も。
もちろん、高校でたまたま出会ったに過ぎない唯ちゃんとの縁も。
……運命の出会い、だなんて言ってしまうこともできるけどね。
夕陽が少しだけ、山の端に触れた。
憂「あと30分もすれば、日も沈んでしまうんでしょうね」
紬「寂しいね……」
憂「……寂しいといえば、紬さん。一つお願いというか、許してもらいたいことがあるんですけど」
紬「……なぁに?」
声色で予感がした。
この後の憂ちゃんの言葉は、風に乗って流れてくる緑の残り香のように、私の心を締め付ける。
子供の頃はそんなことはなかったはずなんだけど、大人になるとどうも空気の匂いに心を揺さぶられがちだ。
いいことなのか悪いことなのかはわからない。子供の頃に夢見た大人は、憧れた誰かの背中は、この匂いに震えていただろうか?
私は、私が望んだ大人になれているだろうか? 憂ちゃんはどうなんだろうか?
憂「……もし、結婚式で私が泣いちゃったら……お姉ちゃんに一回だけ抱きつかせてください。一回だけ……」
紬「……うん、もちろん」
沈む寸前の夕陽に照らされた私と憂ちゃんの影は、私達自身よりも細く長く伸びていた。
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