過去ログ - 咲の登場人物であるところの染谷まこ及び他の人物達に関する一千一秒物語
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215: ◆EUySvhhUdO5I[saga]
2013/05/21(火) 11:38:54.78 ID:/Zpt6y6yo
@せめて同じように濡れる

午後から降りだした雨は、しとしとと続き、放課後になった今でも止む気配はない。
濡れて帰るかと思ったところで置き傘があったことを思い出す。

昇降口で傘立てを確認し、ようやく自分の傘を見つけ、そこで人影に気づいた。
染谷先輩だ。
染谷先輩は空を見上げ、静かに佇んでいる。

染谷先輩、染谷先輩、こんにちは。

声をかけると、こんにちは、とだけ返してきて、それきり。

雨、止まないですね。
傘、ないのですか?
良かったら、送りましょうか?

なんと声をかけても気のない返事。
僕が何も言えなくなっていると、わしは気にせんでええから先に帰っておれ、とだけ言って空を見上げている。

こうなっては仕方がないと、その場をあとにした。

校門を出たあたりで、雨音に消されぬ華やかな声が響いてきた。
振り返ると、染谷先輩の隣に誰かがいる。
竹井先輩だ。

二人は並んで空を見上げているかと思うと、竹井先輩が染谷先輩の腕をとり、あっと思うまもなく雨にその身をさらした。
笑う竹井先輩に、怒る染谷先輩。
でも、終いには染谷先輩も笑いだして、二人で手に手を取って、駆け出した。
佇む僕に気づかぬまま、駆けていった。

傘を閉じる。
途端に雨は僕に降り積もっていく。
水を吸った身体はどんどんと重くなっていく。

僕は沈んだ心で、重い足取りで、二人が駆けていった道を歩いて帰った。


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