過去ログ - モバP「こうして僕の新婚生活は始まった」
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102:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 09:35:52.02 ID:qMigc3jZ0


  「商談の御成功、おめでとうございます」

 オフィス街に存在する、看板の無いビル。その中にある看板の無い店。
以下略



103:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 09:42:21.28 ID:qMigc3jZ0
  「どうぞこちらを、私なりの心付けです」

 メイドがカップにミルクティーを注いでゆく。
僕はすっかりVIP室の住人となっていた。
それも当然か。あのオンボロ事務所へ顧客を案内してしまったら、引き出せるはずの資金援助でも引き出せなくなってしまう。
以下略



104:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 09:49:59.82 ID:qMigc3jZ0
 交渉術とは実に奥深いものである。
どんなにこちらの手札が乏しくとも、カード手品の様に手を変え品を変えればあたかもそれが千枚もの切り札であるかのように装える。
プロデューサー時代のスカウト経験が下地となり、僕の舌は滑らかに歌っていた。




105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 09:55:45.42 ID:qMigc3jZ0
  「そう言えば……幸子ちゃん引退なされたんですよね?」

 幸子は掘り出し物であった。
あれよあれよという間にAランクアイドルへと駆け上がり、事務所の名声を高めてくれた。
今の僕の成功も、幸子の活躍に負う面が多い。
以下略



106:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 10:00:42.50 ID:qMigc3jZ0
 [ボクは普通の女の子に戻ります]、武道館での公演中に幸子は突然のアイドル引退宣言を行った。
こちらとしても寝耳に水の出来事である。
が人気絶頂期の潔い引退との事で、むしろ僕の事務所は[アイドルの自由意思を尊重する優良プロダクションである]との風潮を生み出す要因となってくれた。
関係各所へのお詫びと破棄したプロジェクトの補償によって億単位の損失を計上する事となったが、幸子の功績に免じ不問とした。
最初から最後までトラブルの絶えないアイドルではあったが、幸子は事務所へ十分な利益を還元してくれたのだ。
以下略



107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 10:08:44.74 ID:qMigc3jZ0
  「御味は如何でしょうか?」

 メイドが僕を促す。
カップを手に取り香りを楽しむ。ミルクと生姜がたっぷりそれに少々の蜂蜜、ふむ悪くはない。
口へ含もうとして、ふと気付く――湯気が出ていない。
以下略



108:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 10:14:49.97 ID:qMigc3jZ0
  「そうですか……飲むまでもありませんか……。
   美味しい筈ありませんからね……。当然ですよ、レシピどうりに作ってあるんですから」

 僕はこの香りを知っている。僕はこの味を知ってる。僕はこのジンジャーミルクティーが何であるのかを知っている。
飲まずとも分かる。しかしだからこそ分からない。なぜ僕の目の前にジンジャーミルクティーが差し出されているのか。
以下略



109:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 10:20:49.92 ID:qMigc3jZ0
 カップを戻し、胡乱気にメイドを見やる。
かつては伏せられていた筈の瞳が、今ではしっかりと僕を見据えていた。

  「Pさんは……とても御立派になられました。新興の青年実業家として、今や時代の寵児です。
   多くのお客さんを連れてきてくださって、お店の売り上げも伸びました。
以下略



110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 10:24:44.96 ID:qMigc3jZ0
 メイド――いや強い意志を秘めた瞳を持った店員の目元には、真珠の様に輝く大粒の涙が飾られていた。

  「私、メイドのお仕事は辞めるつもりでした。向いてないと思ってましたので……今でもそうですけど。
   でも、Pさんが御贔屓にして下さって……辞めちゃったらPさんに迷惑がかかるかもしれないと思って……少しだけ頑張っていました。
   本当はちょっとだけ、期待していたんですよ。
以下略



111:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 10:32:45.43 ID:qMigc3jZ0
 それは甘い夢。
少女ならば誰もが一度は願う甘い夢。
好きな人が自分を選んでくれるのだと、その人と幸せに暮らすのだと、やってくるかもしれない幸せな夢。
好きな人の腕に抱かれ、好きな人に口付けされ、同じ時間を過ごしたいと願うそんな夢。

以下略



112:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/26(金) 10:37:56.68 ID:qMigc3jZ0
  「だから頑張ったんです。Pさんに喜んで欲しくて、お茶を入れる練習をしていました。
   でも、Pさんは前に向かって走り出していて……置いて行かれちゃうんじゃないかって不安になりました。
   だから頑張ったんです。お傍に控えていてもPさんが恥をかかない様に、すまし顔の練習をしていました。
   でも、やっぱりPさんは立ち止まる事は無くて……だから私は必死で追いかけて……」

以下略



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