過去ログ - モバP「こうして僕の新婚生活は始まった」
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2013/04/26(金) 10:20:49.92 ID:qMigc3jZ0
カップを戻し、胡乱気にメイドを見やる。
かつては伏せられていた筈の瞳が、今ではしっかりと僕を見据えていた。
「Pさんは……とても御立派になられました。新興の青年実業家として、今や時代の寵児です。
多くのお客さんを連れてきてくださって、お店の売り上げも伸びました。
以下略
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2013/04/26(金) 10:24:44.96 ID:qMigc3jZ0
メイド――いや強い意志を秘めた瞳を持った店員の目元には、真珠の様に輝く大粒の涙が飾られていた。
「私、メイドのお仕事は辞めるつもりでした。向いてないと思ってましたので……今でもそうですけど。
でも、Pさんが御贔屓にして下さって……辞めちゃったらPさんに迷惑がかかるかもしれないと思って……少しだけ頑張っていました。
本当はちょっとだけ、期待していたんですよ。
以下略
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2013/04/26(金) 10:32:45.43 ID:qMigc3jZ0
それは甘い夢。
少女ならば誰もが一度は願う甘い夢。
好きな人が自分を選んでくれるのだと、その人と幸せに暮らすのだと、やってくるかもしれない幸せな夢。
好きな人の腕に抱かれ、好きな人に口付けされ、同じ時間を過ごしたいと願うそんな夢。
以下略
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2013/04/26(金) 10:37:56.68 ID:qMigc3jZ0
「だから頑張ったんです。Pさんに喜んで欲しくて、お茶を入れる練習をしていました。
でも、Pさんは前に向かって走り出していて……置いて行かれちゃうんじゃないかって不安になりました。
だから頑張ったんです。お傍に控えていてもPさんが恥をかかない様に、すまし顔の練習をしていました。
でも、やっぱりPさんは立ち止まる事は無くて……だから私は必死で追いかけて……」
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2013/04/26(金) 10:43:45.95 ID:qMigc3jZ0
強い意志を秘めた瞳を持った店員の姿が、次第に歪んでゆく。
疲労が溜まると常時繰り返されるあの感覚……どうやら昼食時の交渉は僕の神経を大きく損なっていてくれたらしい。
「社長は本当に御立派になられました。私の事なんて振り向きもしない程に……。
今日の会食はお見事でした。どこへ出しても恥ずかしくない、才気溢れる青年実業家が其処におられましたよ。
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2013/04/26(金) 10:50:54.86 ID:qMigc3jZ0
店員には顔が無い。黒く塗りつぶされたのっぺらぼう。
何時だって僕を罵倒する、あの亡霊と同じ姿だ。
いや、違う。彼女は亡霊ではない――彼女とは誰だ?
僕は彼女を知っている。何時も僕のそばでプロデュースを支えてくれていて――
違う! 僕はプロデューサーではない。
以下略
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2013/04/26(金) 10:55:20.80 ID:qMigc3jZ0
意識が混濁する……。
気をしっかり保たねば、彼女は何か大切な事を僕に伝えようとしてくれている。
「怖かったんです……あの時の社長はすごく怖かったんです。
私……ここから逃げ出したかった……でも、逃げ出したら後悔しそうで……
以下略
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2013/04/26(金) 11:01:05.25 ID:qMigc3jZ0
――オフィス街に存在する、看板の無いビル。その中にある看板の無い店――
視界はさらに歪み続け、天地が上下する。
――其処には様々な人種が存在する――
以下略
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2013/04/26(金) 11:11:00.80 ID:qMigc3jZ0
「だから精一杯の勇気を振り絞って、私はお茶を入れました。
Pさんの作った――
アイドルだけではなく私にも優しくしてくれる、そんなPさんの作ったお茶をです。
これを飲めばきっと、昔の様に微笑んでくれるって思って」
以下略
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2013/04/26(金) 11:16:55.92 ID:qMigc3jZ0
「だけど……もう……むーりぃ……。
私……メイドを辞めさせていただきます。
Pさんも一緒に、社長なんて辞めましょう……ね? ね? 向いてなんていませんから。
だから……返してください……Pさんを返してください……返して……ねぇ」
以下略
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2013/04/26(金) 11:22:09.19 ID:qMigc3jZ0
――誰もが自分の事ばかり考えていて、他人を見てあげる余裕などありはしない――
「さようならです……Pさん……今だけは……
また、私に会ったら……その時は……もう一度だけ、優しくしてください」
以下略
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