9: ◆auvPFY1.jw[saga sage]
2013/04/26(金) 14:56:11.32 ID:apyY2YgH0
美容室というのは、どうしてこうきらびやかなのだろう。
もっと、床屋のように落ち着いていてもいいではないか。
背よりずっと高い鏡に映されるぼくは、少しわくわくしていた。
雑誌の切り抜きを渡すときは恥ずかしかったが、気にしていないようだ。
髪を切られている間、ぼくはずっと目を閉じていた。
終わりましたよ、と目を開くと、そこにぼくはいなかった。
ああ、適切な表現をすると、元のぼくはいなかった。
いまどきの清潔感を残した髪型だった。
ぼくは美容師に、正直に整髪料の使い方がわからない、と伝えた。
すると笑うこともなく、ていねいに使い方を教えてくれた。
ありがたい限りだ。また、ここに来たいと思った。
迷わずこの美容師を指名することだろう。
帰りに、コンタクトレンズを作りに行ったが、思いの外時間がかかった。
隣接している眼科で診断を受けねばならず、そこが混んでいたのだ。
ぼくの名前が呼ばれるまでは、携帯を顔を合わせていた。
ちひろさんにメールを送っていたのだ。
日曜日の17時、映画を見に行きませんか。
端的に日時と目的を伝えた味気ない文章だ。
けれど、ぼくにはそれしか思いつかなかったのだ。
そして、ぼくの名前が呼ばれた。
64Res/47.82 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。