過去ログ - ジャブローで撃ち落とされた女ジオン兵が…
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35:キャタピラさん ◆EhtsT9zeko[sage]
2013/04/28(日) 21:08:09.40 ID:mfe01pas0
彼は、車のすぐ脇まで来ると

「はい、姐さん、頼まれてたもん」

と小さな箱をアヤに手渡した。

「悪いな、迷惑かけて」

「なに、姐さんの頼みとあっちゃ、断るわけにもいきませんし」

青年は、そう人懐っこい笑顔で笑った。

「そっちが、お連れさんで?」

彼は、私の方を見て聞く。

「あぁ、そうなんだ」

「まぁ、訳は聞きませんけどね。無茶はほどほどにしといてくださいよ」

「わかってるよ。これでも昔に比べたらおとなしくなってんだ」

「どうだか」

アヤと青年は、親しげに言葉を交わしている。しかし、私のことや、アヤ自身が逃げてきた話をするそぶりはない。

アヤの方も黙っているし、たぶん、青年もうすうす感づいてはいるのだろうけれど、あえて触れないようにしている感じだ。

「お連れさん、俺は、アントニオ・カルロス・アルベルト。昔っから姐さんにあれこれと世話になってるモンです。

 お連れさんは、アンナ・フェルザーさんですよ」

「?」

「ああ、これだ」

私が意味が分からず首をかしげていると、アヤが小さなカードのようなものを手渡してくれた。

そこには、私の顔写真とともに、アンナ・フェルザーと言う聞きなれない名前が書かれている。

「そっちが、居住IDで、写真のない方が、医療証です。もう一枚、写真の入ってるのが、ドライブライセンスですよ」

青年が言うのに合わせて、アヤがそれぞれのカードを私に渡してくる。

「どうしても、写真を入れなきゃいけなくてね。

 申し訳なかったんだけど、あんたの軍のIDカードの写真、勝手に使わせてもらったよ」

そう言えば、車に乗ってから聞かされたのだけど、

私の身に着けていた軍服やIDなどは脱走に先だってアヤが軍の保管庫から回収してきてくれていたらしい。

確かに、顔写真には見覚えがあるが…あれは確か、軍服で撮った写真だったはず。

「体はアタシなんだ、それ」

アヤがそう言って笑う。見ると確かに。私の顔だが、首から下は、今、アヤが着ているのと同じ服装だ。

写真の偽造までしてしまったのだ。

「これ、大丈夫なの?セニョール・アルベルト、あなた、捕まったりしない?」

私はまた、少し心配になって尋ねると、彼は笑って

「セニョールだなんてよしてください。大丈夫ですよ、この程度。別に汚職やって大金巻き上げてるわけでもないんでね」

「連邦の役人は多いからなぁ」

アルベルトとアヤはわざとらしく困った風な表情をして私を見つめた。なんだかそれがおかしくて笑ってしまった。


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