過去ログ - ジャブローで撃ち落とされた女ジオン兵が…
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39:キャタピラさん ◆EhtsT9zeko[sage]
2013/04/29(月) 19:52:28.79 ID:IQ+37yxC0

「大丈夫?」

アヤが傍らで、そう言いながら私の背をさすってくれている。

「うん、平気」

そうは言いつつも、まだ、胃のあたりが酸っぱい。
南米を出てから一週間。船は予定通りに、オーストラリア大陸へ到着した。

私は、いい加減船酔いに負けて甲板で新鮮な空気を吸おうと思っていたのだけど…。

甲板から見えた景色に気付いて、アヤに話を聞いた途端、いっそう気分が悪くなってしまった。

このシドニー湾は、あのコロニーの破片の落下でできたとアヤが話してくれた。

コロニーが落ちる前、ここは何千万人もの人が住む大都市だったという。

ジャブローに落下させるはずだったコロニーは、連邦軍の抵抗に合い、コースを逸れて大気圏内で3つの大きな破片に分解した。

その一つが、ここに落下したというのだ。

大気圏を抜けてから地上に到達するまでには、ものの数分もかからないだろう。

そんなわずかな時間で、大都市の全民間人が避難できるはずなどない。

ここでは、それだけの数の人間が、一瞬で死んだんだ。

これまで、ジオンの戦果報告で、コロニーをはじめとするさまざまな場所で多くの民間人の犠牲者がでたことは知っている。

でも、ジオンはそのたびに追悼式を開いていたし、なにより、私にとってはどこか遠くのことのように感じられていたから、

ほとんど感慨を覚えなかったのだけど…この場所に来て、それが唐突にリアルに感じられてしまった。

まるで、ここで亡くなった人たちの怨嗟が、聞こえてくるように…。

「スペースノイドは感受性が強いって話は聞いたことあるけど、こいつはちょっとひどいなぁ」

アヤは心配そうに私の顔を覗き込む。

ごめんね、と言おうとしてアヤの方を見ようと首を傾けた途端ぐらりと脳の中が揺れて、また強烈な吐き気が胸を突いた。

胃が収縮して、酸味が一気にこみあがってくる。私は、何度目かわからない胃液を、海へ吐き戻した。

 「大丈夫ですか、お客様?」

乗ってきた船の船員が話しかけてくる。

「あぁ、うん。悪いんだけど、どこかに水売ってないかな?このままだと脱水になっちゃいそうなんだ」

「あぁ、お待ちください。すぐにお持ちしますよ」

アヤの言葉を聞いて、船員が駆け出す。

 情けない。また、アヤの世話になってしまっている…。

私は、どれだけ彼女に迷惑をかけてしまうのだろう。

「酔い止めも効かないしなぁ…吐き気止めかなにかの方がいいんだけど…」

アヤはあたりを見渡す。

「つったって、薬局なんてあるわけないしなぁ…病院ないかなぁ。港だし、診療所程度ならあってもよさそうなんだけど…」

ここは、コロニー落下のあと、連邦軍が作った仮設の港。船舶の往来のための施設以外は、まだ何もないらしい。


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