過去ログ - ジャブローで撃ち落とされた女ジオン兵が…
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41:キャタピラさん ◆EhtsT9zeko[sage]
2013/04/29(月) 19:54:18.42 ID:IQ+37yxC0
 診療所は、私がうずくまっていた桟橋のすぐそばにあった。

見るからに仮設である、と言わんばかりの、薄い樹脂ボードで作られた他の建物に比べると、

きちんとしたコンクリートか何かで整えられた建物だった。

 「お邪魔しまーす、すみません、ちょっと連れが具合悪くなっちゃって…」

アヤそう言いながら、ドアを開けて中に入る。

そこは待合室のようになっていて、日に焼けた船乗りらしい人たちが数人、長椅子に腰かけてぐったりとしていた。

 「はいはい、ただいまー」

パタパタと足音をさせて、奥からTシャツにハーフパンツ、その上にだらしなく白衣を羽織った女性が姿を現した。

「あの、すいません。嘔吐がとまらなくって…船酔いみたいなんですけど…」

アヤが説明すると、女性は私の顔を見て、目にライトを当てて見せてから

「下痢なんかはされてませんか?あるいはひどい頭痛はありませんか?」

と聞いて来た。そんな症状はないので、わたしは力なく首を横に振る。

「そうですか…とりあえず、奥の処置室へ。輸液しましょう」

女性の案内で、アヤに支えられたまま待合室の奥の部屋へと通された。

消毒用のアルコールのにおいがする部屋だった。

そこには狭い簡易のベッドがあって、そこに横になるように促される。

倒れこむようにして、私はそこに体を横たえた。見上げる天井が、ゆらゆらと動いている感じがする。

気持ちが悪い。

「それじゃぁ、準備してきますんで、お待ちくださいね」

医師らしい女性は、そう言ってまたパタパタと足音をさせながら部屋から出て行った。

「アタシもちょっとトイレ行ってくるよ。一人で大丈夫?」

アヤが心配そうに私に行ってくる。

「うん、大丈夫。ありがとう」

私はそうとだけ答えて、ふぅ、と息を吐く。

外でうずくまっているより、多少は気分が楽だ。

「じゃぁ、すぐ戻ってくるから」

アヤは再度、私に断って部屋から出て行った。

 アヤは船の中でもあんな感じだった。私を気遣ってくれる、優しい人。

でも、いつもそうなわけではなくて、そのタイミングを心得ている、と言うか。

無駄にこちらを心配しているわけじゃない。私の状態や、周りの状況、いろんな情報を収集して、

助けが必要なときに一番欲しい形の助け舟をくれる。

彼女は優しいだけじゃなくて、状況判断にも情報分析にも長けている。

そしてあのフランクな性格…

 たった一週間かもしれない。

一週間あれば十分だったのかもしれない。

とにかく私は、いつの間にか、そんなアヤにすっかり安心してしまっていた。

いや、そればかりか、信頼と言うか、彼女がかけがえのない友達であるかのように感じていた。

 それほどまでに、彼女は魅力的で、フレンドリーで、何より、優しかった。


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