過去ログ - ジャブローで撃ち落とされた女ジオン兵が…
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47:キャタピラさん ◆EhtsT9zeko[sage]
2013/04/29(月) 22:17:45.73 ID:IQ+37yxC0

 潮風がゆっくりとたなびいている。私は、開けたデッキの二階から、海を眺めていた。

 以前、アヤが話してくれたような、エメラルドブルーに透き通った海が、そこには広がっていた。

無限に広がる宇宙空間の星の「海」は、眺めていると空恐ろしくなってしまうのだけれど、地球のこの海は違う。

青く澄んだ空に、海。こんなきれいな景色が、自然が、これほどまぶしくて目が離せないものだなんて思ってもみなかった。

アヤがこんな海の見える場所で暮らしたいと思うのも、無理はない。こんな景色を見ながら、毎日をのんびり過ごすことができたら…

それはもしかしたら、一番幸福な生活の一つの可能性なんじゃないかと思える。

 そんな話をしようとして振り返った先のデッキベッドに腰掛けているアヤの、サングラスの奥の目は、

決してこの海にも空にも、雲にも太陽にも向けられてはいなかった。

彼女の眼は鋭く、全身から警戒感をほとばしらせている。

 それもそのはず。この船は民間船なのだけれど、軍事徴用もされていて、乗客の半分以上が連邦の軍人なのだという。

確かに、そこかしこにいる乗客のうちには連邦の軍服を着ている連中もいるし、

私服を着ている者の中にも相当数の連邦軍人がいるようで、こんなに素晴らしい景色だというのに、

どこか陰鬱で、物影でコソコソと身内の陰口をたたいている姿を見かける。

もちろん、私のようにデッキに出て空を見たり海を見たり、

陽気に飲んだくれて倒れ、豪快ないびきをかいている兵士もいる。

一口に連邦軍と言ったっていろいろだ。アヤもその一人だったように。

そして、その逆に、私のような隠れたジオン軍人を摘発する任務を受けた者や、

アヤのように脱走軍人をとらえる役割の者も当然存在するだろう。

そういう兵士や軍人たちがこの船に乗っているかどうかは定かではないから、アヤの警戒はもっともだ。

でも、今回ばかりはちょっと警戒しすぎなんじゃないかと思うところがある。

 この船に乗って、もう5日無事に過ごしている。3日目までは、ずっと部屋にいたけれど、

昨日と今日はアヤを引っ張って、こうしてデッキに出たり、船内の売店を回ったりもしてみた。

もちろん、最初のうちは警戒していたけど、まさかオーストラリアから出た船に、

ジオン兵が紛れ込んでいるなんて思ってもみないだろう、普通なら。

 3時間ほど前、船は東南アジアの民間港に入り、そこで降りる乗客と、新たに乗る乗客の乗り降りが行われた。

新しい乗客にも、とりたてて警戒が必要な感覚を受ける者はいない気がしていた。


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