過去ログ - ジャブローで撃ち落とされた女ジオン兵が…
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5:キャタピラさん ◆EhtsT9zeko
2013/04/27(土) 23:17:40.17 ID:4bbA3AcR0
 そんな私を気遣ってなのか、彼女はいろいろと話しかけてくれた。
 私がモビルスーツのパイロットであることや、少尉であると階級を教えると、彼女もまた、戦闘機のパイロットで階級も同じ。被弾した機体をなんとか不時着させてみたものの、基地までの距離が遠く、簡単に帰れないことなどを教えてくれる。それから、彼女は魚取りが好きで、釣り以外にもいろんな方法を知っているんだと話すので、私が趣味は読書だと話すと、「暗いなぁ」なんて悪びれもせずに言った。年齢は22歳だそうだ。私の方が1歳下だ。なんだか、本当に普通の会話で、今が戦争中で、相手が敵軍の兵士だということすら、信じられないくらいだった。でもなんだかくすぐったいのと、なれ合っちゃいけないという変な意識で、名前は聞けなかった。
 ずいぶんと長い間話をしていた気持ちになっていた。不意に彼女があくびをして同時に大きく伸びをした。
「さて、寝るかなぁ。あんたはまた明日、味方探しに行くんだろ?あたしは、戦闘機に積んであったビーコンが直れば救助をひたすら待ってみるけど」
「うん」
そう言われると、なんだかさみしい気もした。でもまぁ、少なくとも、連邦にはこういう人もいるんだというのを知ることができただけでも良いことだろう。
「だったら、ちゃんと休んだ方がいい」
彼女はそう言って、ポンポンとお尻をはたきながら立ち上がった。
「そこに不時着させた機体があるんだ。コクピットの中なら、ゆっくり休めんだろ」
「いいの?」
だって、敵軍に自軍の兵器を見せるなんてことは、機密が漏れてしまう危険性を十分に孕んでいるじゃないか。そんなことまでしてくれるのか、この子は…。
「何日か歩いたんだろ?だったら、こんなジャングルでも、夜中にはひどく寒くなることは知ってるよな。それに、ワニもいるし、ヘビもサソリも出る。最近じゃ数も少なくなっちまったみたいだけど、ジャガーってでかいネコみたいのもいないこともないしな」
確かにその通り。昼間はあれだけ暑いのに、いざ日が沈むとどんどん寒くなっていく。昨日の晩は、墜落のショックと痛みと恐怖と寒さで、寝るになれなかった。
「じゃぁ、お言葉に甘えようかな」
たぶん、この子には機密とかそういうことも関係ないのだろう。私も、これから彼女が案内してくれる先に何があっても他言しないと、内心固く誓った。
 彼女が案内してくれた先には、木々を何本かなぎ倒して止ったと見える戦闘機らしき残骸が横たわっていた。戦闘でも、軍の資料でも良く見る、汎用的な機体だ。ボロボロになった尾翼に「Ω」のマークが描かれている。
「あれ、あのマークは?」
「あぁ、私の部隊名。オメガ隊っつって。まぁ、あたしは中隊の7番機だから、おまけみたいなもんだけどね」
彼女はそう言いながら、コクピットのキャノピーを外付けのハンドルをグルグルまわして開いた。
「そっちは、あの緑のトゲツキに乗ってたんだろう?あたしも最近モビルスーツの訓練受けてたんだけど、あたしの隊には配備が間に合わなかったんだよ。あ、今のは機密だったかな…ま、いいや、忘れてー」
連邦がモビルスーツの量産をしているという情報は手にしていたが、そうか、連邦軍の本拠地ジャブローへの配備が間に合っていないところを見ると、まだ数が多いというわけではないのだろう。でも…そのことは、聞かなかったことにする。
「うん、忘れとく」
「悪りーな」
「ううん」
「悪いついでに、もう一つ謝っとく。この戦闘機、単座なんだ。複座のタイプもあるんだけどさ。だからちょっと狭い」
「いいよ。ワニが来ないだけ、ゆっくりできそうだし」
彼女は、私がそう言ったのを聞いていたのかどうなのか、コックピットの中をごそごそといじりながら
「あーおっかしいな、このシート外れんだけど…くっそ、工具ないとダメか、やっぱ?イジェクトのこと考えりゃ、もっと簡単に外れてもよさそうなんだけど…いっそイジェクションレバー引いちまうか…いや、そんなことしたらあたし黒焦げだしキャノピーもとんでっちまうしなぁ…」
とぶつぶつ言っている。
私は、コックピットの縁に手をかけて中をのぞかせてもらう。
「そんなに狭いの?」
「あぁ、シート目いっぱい後ろに下げてもこの程度」
彼女が中を見せてくれる。足元は広々してはいるが、確かに二人が収まるにはちょっと狭い気がする。
「お、待ってくれ、このレバーか?うしょっと」
彼女がシートの脇に腕を差し込んで何かを操作すると、シートがゴトっと動いた。
「おー、やった!ちょっと手伝ってくれよ。これ、外に放り出す」
彼女の言葉に従って、コクピットに収まっていたシートを二人掛かりで機体の外へと運び出す。すると機内には、なんとか足を延ばすことくらいは出来そうな空間が現れた。
「それにしたって、まだ狭いけど…ま、さっきよりはマシか」
彼女はそう言って、私を、いや、正確に言うと、私の体を見やって、
「どっちかっていうと、あんたが上だな」
とつぶやいた。
「上?」
私が聞くのも構わず彼女は
「ほら、上がれ」
と手を差し伸べてきた。私はその手をつかんで、コクピットの中に上げてもらう。すると彼女が先に床に座って、ブーツを脱いでキャノピーの支柱に結び付けると外に垂れ下げて、体をコクピットの後ろの壁にもたせ掛ける。それから
「キャノピー、閉めるぞ」
と言ってきた。私は仕方なく、彼女の上に折り重なるようにして寝転ぶ。私はブーツを外には干さずに、足元に置いておくことにした。コクピットの内側にもあった手動のハンドルを回して、キャノピーを閉めた。私は、彼女の体にもたれる様な格好だ。
「あの、重くない?」
私が聞くと彼女は相変わらずなにかをごそごそとやりながら
「ああ。へーきへーき」
となんでもない風に答えて、どこからか大きな厚手の毛布を取り出した。
「寒いからちゃんとかけてくれよ。あたしまでかぜ引いちまう」
彼女は、私の後ろでカラカラと笑いながら言った。
 私は一度体を起こして、軍服の上を脱いで足元に畳んでから、彼女と一緒に毛布をかぶった。
「あーなんか、あれだな」
「ん?」
彼女が何か言いかけるので聞く。
「一人で寝るより、安心する」
そうだね…私もそう思うよ。たとえそれが敵であるあなたでも。
「うん」
そうとだけ返事をして、私は目を閉じる。
「アヤ・ミナト」
「え?」
「私の名前、アヤ・ミナト。あんたは?」
「えと、レナ・リケ・ヘスラー」
「そか、んじゃぁ、おやすみ、ヘスラー少尉」
「うん、おやすみ、ミナト少尉」



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