過去ログ - モバマスSS練習スレッド
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385:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/09(日) 09:25:56.36 ID:CY9RELSC0

わたしは、彼のやろうとしていることが分からなかった。

シンデレラガールズ・プロダクションに所属して以来、変わらなかったこの感情。
頼りないと思っていた彼が、非常に情熱の溢れる好青年であったと気付いた。
それに惹かれ、仕事をする上でも、どうであれ。わたしは彼が好きだ。

とは言っても、経営難のプロダクションに、色恋沙汰など縁遠い話だ。

日に日に減っていく仕事。設立当時はまだ、他が興味で仕事を回した。
だが、アイドルとして未発達であったわたしたちにそれらの仕事は難しかった。
ゆえに、各社は手をひいた。プロデューサーは、日々頭を下げて仕事の依頼を乞うていた。

それでも、希望の光など一筋も差さなかった。誰もが望んでいたことだというのに。

書き込まれることのなくなったホワイトボードは、数週間前の予定が羅列されている。
ああ。あの頃は、まだ1週間に1回であれ、楽しみな仕事があった。
けれど、今となっては、数ヶ月に1回という頻度だ。

ついには、社長は経営方針を変え、事務所の存続だけを願うようになった。

いつかは、転機が訪れる。いつかは、わたしたちの努力は報われるから。
疲れきった顔で社長は呟き続けた。誰に対してでもなく。
他プロダクションの宣伝にも手を染めた。

アイドルを持ち上げる為のアイドル。つまり、やらせ、と呼ぶべきものすら。

それくらいしか、わたしたちに回ってくる仕事などなかった。
未払いの給料があってさえ、わたしたちは笑顔で仕事を続けていた。
ああ、未来など、もうない。そう思ったとき、わたしは彼に想いを伝えた。

「わたし、渋谷凛は、プロデューサーのことが好きです」

答えを求めているわけじゃなかった。けれど、伝えておきたかった。
もう、未来なんてない。きっと、もうすぐ疎遠になるだろう。
泣きそうな声で、それだけを伝えて、事務所を出た。

…その日から、だっただろうか。プロデューサーが変わってしまったのは。

誰にでも誠実だった彼が、一変してしまった。今はもう、何を考えているのかわからない。
あの優しそうな笑顔ですら、一瞬足りとも見かけることがなくなってしまった。
仕事などあるはずもないのに、いつまでも企画の資料を練っていた。

「プロデューサー。プロデューサーは、何をやろうとしているの」

「…凛には、関係のないことだ」

「なんで。なんで、変わっちゃったの。わたしのせいだったら、謝るから」

「誰のせいでもない。本当に、誰のせいでも、な」

「………」

わたしを払いのけるようにして、彼は定刻通り事務所を出て行った。
そこに残されたのは、変わってしまった彼を蔑むような視線と、溜息だけだった。
わたしは、ちらりと想いを馳せるように彼のデスクの上をみた。そして、そこに、存在していた。





…シンデレラガールズ・プロダクションの、倒産計画が。

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これは何か書けそうな気がしてきた




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