775:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします
2014/03/25(火) 00:29:59.41 ID:BgI3GEk5o
「それで私に白羽の矢が立ったと」
「どうか頼めないだろうか」
駅前の繁華街にある料亭で件の彼女の説得にかかる。
彼女の名は千川ちひろ。メガネの事務所で働く事務員であり、いつも蛍光色な緑の服を着ている。
見てくれに関しては文句はない。街角で見かければスカウトしたくなるほどの別嬪だ。
声も若々しく、さらに仕事では有能ときている。歳もおそらくは二十台半ば、後半ぐらいだろう。
しかし問題は性格にあった。
金だ。金の亡者だ。守銭奴なのだ。
何ゆえにアイドルをやらなかったと聞かれた時に金を数えられないからと答えたとまで言われる
ほどの金を愛している女なのだ。金と結婚しているのかもしれない。
しかしその事を知っている人間はさほど多くはない。彼もメガネの友人だから彼女と面識がある
だけでアイドルたちは全く知らない相手だ。
ちひろに頼み込むと言う事は講座の預金が目減りすることだと決意した上で彼は頼み込んだ。
「やれやれ。うちのプロデューサーの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいぐらいですね」
「返す言葉もない」
事情を話すと彼女はため息をついて、彼を見下す。
「一体どんなスケコマシで女たらしなんですかね。女性の敵ですよ」
「だからこそそれを整理しようと思って」
「もしも言われなかったら転落死してたかもしれませんしね。
あ、すみません。これもお願いします」
料理を持ってきた店員に注文を追加する。わざわざ人に聞かれぬように
個室を選んだというのにこの女は人前でも平気で人聞きの悪い事を言う。
「まだ飲むのか。もういくら飲んだと思っているんだ」
「それは量で? 値段で?」
「どちらもだ」
高い酒と料理ばかり狙って頼んでいる。もう少しくらいランクの低い店を選べば
よかったと少し後悔したが、これも未来のためだと諦める。
「私に頼むというからにはこれくらい予測していたことでしょう」
「酒好きでザルだとは聞いていない」
「さいで。さてと、あなたの話ですけど乗ってもいいですよ。
無論お金が出るのでしょう?」
「出します。出しますとも」
「結構。仕事はあなたについて回ればいいと」
「ええ。適当に相槌ぐらいは打ってください」
「それでいくらですか?」
彼は額を示すと、彼女はその五割増しを要求した。金の単位だけの言い合いが
続いた後、彼は本来の額の三割増しで手を打った。とんだ出費だ。
「それで何人くらい周るんですか?」
「特に注意が必要なアイドルだけですから三人ぐらいですね」
「本当に大丈夫ですか? 鈍感なのに自分で判断して」
「ええ、大丈夫です。ご心配なく」
周る人数を増やして、金を搾り取ろうとしているがそうはいかない。
これ以上の出費を増やせば、フィアンセとの未来の生活にも支障が出る。
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