996:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/07/01(火) 11:29:01.23 ID:Yt2RSFXVo
あの時のプロデューサーの顔は、きっと一生忘れられないだろう。
喜色満面の笑みが、そのまま顔に貼り付いたようになって、その目が失望して、困惑して、泳ぐのを。
抱きしめてくれようと広げた両手が、だらりと力なく垂れ下がるのを。
「はは…冗談、だよな? 凛」
なんと返したかは、良く覚えてない。
──まずい。
そう思って、とにかく必死に何かまくしたてたような気はするけど。
でも、全部無駄だった。そうでなければ、全て裏目に出たんだと思う。
「凛…この際はっきり言っておくが、俺がお前と付き合うなんて考えた事なかったし、これからも考える事はない。考えたくもない」
「シンデレラガールになって気が緩むのも分からないではないが、いくら何でも弛みすぎだぞ」
「確かに一つの目標ではあるが、同時にスタートでもあるんだ。ワンランク上のステージで、お前は輝かなきゃいけない。下らない事にうつつを抜かしている暇なんか、ないはずだ」
「俺はプロデューサーで、凛はアイドルなんだ。それ以外ではあり得ない。妙な思い違いをして、意識をブレさせるな。もう新人とは違うんだ、凛が転べば、凛一人の問題で済まないんだからな」
気がつくと、一人で街を歩いてた。
ちゃんと着替えて、変装もしてて、我ながらアイドルが身についたなって、変に感心しちゃった。
「フフ……。バカだなぁ、私……本当に…バカ、だ…なぁ…」
笑い飛ばそうとしたけど、最後まで言えなかった。後から涙が溢れて、嗚咽を抑えられなくて。
ああ、もういいや。私はもう、完璧にやけくそになって、誰もいない事務所で、手足を振り回して、大声で、泣いた。
畜生。プロデューサーの馬鹿野郎。渋谷凛の、大間抜け。私なんか、消えちゃえばいいのに。
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