997:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/07/01(火) 11:29:31.64 ID:Yt2RSFXVo
ガチャガチャ。ガチャリ。
急に音が響いて、意識を呼び戻された。
事務所は真っ暗。ちひろさんの席で寝ちゃっていたみたい。
ドアが開いて、誰かが入ってくる。
妙にヨタヨタした歩き方。酔っぱらいかな。楓さんにしては、体重がありすぎるし、これはヒールの音じゃない…って、まさか?
「ちひろさーん? 帰ったんじゃなかったんですかぁ? ったく、人には残業するなって言っといて、自分は泊まりなんて、医者の不養生、鬼の目にも涙ですよぉ」
やっぱり、声の主は、プロデューサーだった。鬼の目にも涙は用法が違うと思う。
「はぁー、久しぶりに飲んだなぁ。……っと、やべ、歩けない。だはは、すいません、ちょっとソファに」
はい、はい、御免なさいね、っと。なんて、誰に言ってるのかよく分からない謝罪をしながら、プロデューサーがソファにどすんと腰を落とす。
「ふぃー。ちひろさーん、寝てるんですかぁ?」
プロデューサーがこちらに首を巡らせる。人がいるのは分かっても、それが私だとは分からなかったみたい。
「ま、いいや。そのままちょっと聞いてもらえますかね。なんか、一人で飲んでても全然気が晴れなくて。でへへ」
ソファまでは随分距離があるけど、こっちまで酒臭さが漂ってくる。
「凛がね、俺の事、好きだとか言いやがるんですよ。ははは、笑えるでしょ? ったく、何考えてんだ、あの花屋!」
花屋は関係ないだろ。人の告白を笑い物にして。流石に頭に来て、投げつけるのに丁度良いものを手探る。
「あ、ご心配なく! 完璧に振ってやりました! もう、完璧に!」
相槌もないのに、プロデューサーは一人で喋り続ける。
「希望を持たせるような事も一切ナシ! 凛は一つ定めた目標に全力投球しちゃう子ですからね。脈アリなんて悟られたら、他の全てを投げ出して突っ走りますよ、絶対」
それは悔しいけど、当たってる気がする。
「あー、でも、あんな子にそこまで好かれたら、幸せだったろうなぁ…」
はぁ、と大きな溜息を一つ。思わずどきりとする。
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