19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/02(木) 12:03:58.41 ID:kADqiJRHo
炭化した右頬を懸命に動かし、咲が詠唱する。
照は防衛本能に従い、まばたきよりも早く咲から距離を置いた。どこから攻撃されてもおかしくない。『来い』だけではどの系統の魔法かもわからず、カウンター型の超攻魔法の線もありうる。
六感を張り巡らせてる間、他の五感を咲へ向け続ける。そして、地下牢全体が軋み上がり、咲がうずくまるすぐ後ろの壁から根が突き出た。
照(っ、)
比重の崩れた石壁は流れるように崩壊を始め、根全体が咲を包み込むと引きずり込んでいく。
根が咲を連れ去っていった先は龍門渕邸と隣り合う崖。
照「逃がすか」
ここで根に触れてしまえば思う壺であるが、一度地上へ戻りそこから龍門渕邸を抜け出し谷へ向かっては悠長すぎる。
宝剣を呼びつけ、すぐさま後退していく根へ突き刺す。
剣は緑色に鈍く輝き、刃が触れることなく木の根を引き裂いていく。生死の理をまったくもって無視するその威力に、現在の所持者である照でさえ、恐れを感じてしまう。
既に姿の見えない咲へ剣が到達することは難しい。しかし、何もしないよりはマシだ。
照「がっ」
剣を避けて、根は照の首元へ巻きつく。庇護の力が逆流し、血管が緑色に変色、それでもこちらを殺そうと根は締め上げた。
照(もう一発ッッ)
唾液を燃料へ転換。歯を火打石に見立てて奥歯が折れるほど強く噛む。
蝋燭の火のような弱弱しい朧火にも根は正確に反応した。術者のトラウマは魔法にも影響は出るのだ。
根がひるむ。照を掴んだまま、逃げるように穴の中へ入り込んでいった。
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