過去ログ - 菫「荒野より君に告ぐ」
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24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/02(木) 12:10:35.80 ID:kADqiJRHo
 
菫の読み通り、宥を追う狼はいなかった。
読みと言っても直感で、なぜなのかはっきりとはわからない。完全に術者に操られているのか、それとも魂の代償への契りなのか。ただ菫にとってそんなことはどうでもよくて、殺意を向ける狼達は牙の生えた糞袋と変わりなかった。

バウッ

群れの中で最も若い一匹が飛び掛ってきた。

菫「『ファイト』、」

菫「『戦う、君の唄を』」

覚醒した蛇の本能に従い、小石を蹴り飛ばす。
狼の頭が破裂した。

菫「『戦わないやつが笑うだろう』」

菫「……いい歌だ。宥の母親が好きだったらしい」

キャオオン

鉄砲玉を失った狼の群れは、一つの生き物のように、息を合わせて菫へ襲い掛かる。

菫の指先の届く範囲が致死圏内となった。

薙いだ拳で一匹の首を抉りとり、逆の腕でもう一匹の頭を掴んで握りつぶす。
頭のない一匹を投げ飛ばして、地から足が離れた二匹を叩き落すと、その内一匹は踵で踏んで、もう一匹は頭だけ蹴りあげた。
トマトみたいだな、と菫は思った。

菫は赤い瞳孔をちらつかせ、髪の先まで完全な白へと変化していた。
魔法も使わずに目にも留まらぬ身のこなしで狼を駆逐するその姿は、人間を脱していた。

二秒後、今度は五匹殺した。

狼達は東横桃子の怨念を肩代わりして、逃げることもせず、得体のしれない何かへ牙を剥き続けた。
畜生程度の頭脳では、波状攻撃以上に画期的な戦法を生み出すことはできず、ただやみくもに飛び掛る以外に襲う方法はなかった。
一匹、また一匹、絶対的な捕食者を前に命が消し飛んでいく。
それでも菫に傷一つ負わすことができなかった。

また五匹殺した。

果敢に挑んできた老いた一匹の脳漿を飛び散らせたとき、菫の口から黒い霧が漏れた。
それは竜人がときたま吐く重金属を含んだ黒煙だった。


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