22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2013/05/02(木) 13:16:12.56 ID:3+/L7r7C0
車を停め、俺は柚の少し前を歩き出した。
相変わらず、彼女は俯いたままだった。
いい方法、など分からない。けれど、俺は。
『俺、お腹空いてきたんだ。何か食べに行こう』
精一杯の笑顔を向けて、柚に言った。
彼女からの返事はない。それでも、いい。
『好きなもの頼んでいいからな、遠慮しなくていいよ』
「…そっか。なら…アタシは、何か甘いものでも頼もっかな」
俺は腹が減った、という言葉と裏腹に軽食だった。
それに反して彼女はいくつかの甘味を頼んでいた。
そして、フォークがかちゃりと音を立て、同時に、彼女は言った。
『今日…ごめんなさい。で…その。ありがとう』
『お腹、空いてないでしょ?』
「………」
『その…さ。アタシ、これからも失敗することって、あると思うんだよね』
『でも、頑張るから。だから…』
「ちゃんと、見てるから」
「何かあれば、俺が支える。プロデューサーだから」
「そして、1人の男として…って、何か変なこと言っちゃったな」
『ううん、ありがとう。アタシ、思ってるんだ』
『Pサンに声かけてもらって良かったな…とか!』
『女の子なんて星の数ほどいるでしょ?』
『でもアタシの事、人込みの中で見つけ出してくれたのは…Pサンだけなんだよっ!』
ようやく笑ってくれた、彼女の顔には、夕焼けかどうかも定かでない朱が差していた。
それに加え、慌てたように俺の口へフォークに乗せたケーキを運んだ。
少し照れくさかったが、ありがたくいただくことにした。
『じゃ…食べ終わったし、帰ろっか!』
『Pサン、アタシ今後も頑張るから…見ててねっ?』
店を出て、俺の少し前を歩き出した彼女の顔は見えない。
けれど…きっと、笑顔で居てくれるだろう。
俺の口の中のケーキに、さらに甘みが差した気がした。
おわり
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