過去ログ - 李衣菜「ロックとは――戦いだ!」
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/03(金) 01:01:09.95 ID:yB2cmx3Oo
そうして一週間後。
有香さんとの合わせの日。
お互いジャージ姿で横並びになり、トレーナーさんの合図を待つ。
行きますよ、の声と同時に、あのテープが巻かれる音。
私の身体は、初めから全部知ってたかのように動き出した。
頭は不思議なほど透き通ってて。何も考えなくてよかった。
こんな感覚、今まで経験したこともなかった。
ステップ、ステップ、ターン。
身を回す動きの中で、蹴り上げた足が弧を描く。
有香さんのことさえも、私には見えなかった。
ひたすら自分の内側に沈み込むような、そういう感じがあった。
止まって、動き、動き、止まって――メリハリが必要な場面でも、
私の手足はブレずにいてくれた。
片膝を付き、跳ねるように立ち、ステップ、ストップ、
息を吸って、右手を握り、足をしっかり地面につけ、腰を捻り、前へ、押し出す!
ぴりっとした肩の痛みも、今は気にならない。
一週間分の重みと共に、拳が空気を裂くのが、それこそ手に取るようにわかった。
勿論、有香さんには及ばないけど――気持ちいい。
ラスト、ターンしてポーズ。呼吸を忘れた一瞬が、その時ばかりは途方もなく長く感じた。
曲が終わり、テープが巻き戻る。
荒い息で、私は余韻を味わった。
できた――できた!
隣の有香さんを見る。きらきら光る汗もそのままに、お疲れ様です、って声を掛けてくれた。
途端に全身の力が抜け、背中から後ろに倒れ込む。
固い床は冷たくて、それが心地良かった。
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