959:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/05/27(月) 00:23:54.49 ID:nYn1ITp6o
俺は……逃げた。「一週間待って」と、無駄に期限を設定しては、返事をする行為から逃げたのだ。
すると彼女は、どこか諦めたような顔をして、俺からすっと身を離す。ふわりと彼女の髪が揺れ、一瞬彼女の表情が隠れた。
「……やっぱり……」
しかし、次に彼女を見れば笑顔を繕っている。そして頷いた、一週間だけ待ってやると。
但し、それ以上は絶対に待たない、絶対に返事してねと、ダメ押しされてしまうのだった――。
―― 無理だった。やはり彼の、ううん、彼女の心にはもう、長谷川儚が居るのだろう。
私が恥ずかしくも無理に顔を近づけ、真っ直ぐに響を見ようと努力した。しかし彼の目線はどこか遠くを向いていた。
多分、本人は気付いていない。……もっと早くに言えばよかった。もっと早ければ、きっと響は私に応えてくれた。
既に電灯は落とされ、響と背を向ける形で布団に包まった。あれ程愛しかった時間は、今では辛い。
早く離れたい。早く一人になりたい。早く一人で泣きたい。どうして私はこうまで普通なんだろうと思えてしまう。
「……知ってたのに、響の気持ちを……私……」
何となく、彼が私を好いてくれてるんじゃないかと気づいたのは、二年生となった頃である。
どうにも以前よりも更に素っ気無い態度を取るようになった響が変だと、志藤猛に相談を持ちかけた事があった。
そこで彼は、響の思い人をほのめかす発言をしたせいで、何となく気づいてしまったのだ。
だからこそ、嬉しかった。両思いならば、そう慌てる事は無い。今は三人の時間を過ごし、そして卒業の時に……そう思っていた。
けれど、その時から厄介な存在だと思っていたのが長谷川儚である。彼女には特技があった。絵という特技が、響を連れ去っていく。
内心焦っていたのかもしれない。彼が彼女に取られる前に手を打たなければと。
予定は更に狂うことになる。長谷川夢の登場、そして彼女が響の住まう星見寮に居付く事になり、更に私を突き動かす事になる。
なのにゆっくり遊べない、話せない。一緒に居る時間は、どんどん無くなっていってしまう。
「……大失敗だね、えへへ……。ごめんね猛、私、駄目だったよ……」
彼にお願いして、今日は呼ばれても二人きりにさせて欲しいと告げた時、彼もまた複雑そうな顔をしたのだが、
それでも構わない、行って来いと背を押したのだ。だけど、その恋はもう実らないだろう。
既に響は心地良さそうに眠っており、横顔もまた女の子らしくなってしまい、ちょっぴり残念だと思いつつも、
その頬を撫でては、こっそり……>>960
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