過去ログ - 安価で女装ギャルゲー風SS part15 -SS速報VIP

過去ログ - 安価で女装ギャルゲー風SS part15

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982: ◆EEWQeQ.ZIg[saga]
2013/05/31(金) 23:05:56.01 ID:MBmejNQ2o
1、膝枕……

貴方は自分の太股をぽんぽんと叩き、摩り、調べる。
筋肉が付いている分だけ、少し硬いか……体の構造を少しいじって、柔らかくしてみる。

揉んでみると、不自然でない程に柔らかい。これならば、膝枕としては及第点だろう。

貴方「虚弱さん、こちらへ……」

貴方は虚弱に声を掛ける。当然ながら返事は無い。
無言の肯定と言うのはあまり好かないが、四の五の言っている場合ではない。
貴方は虚弱の体をゆっくりと倒し、その頭を自分の大腿部に乗るようにする。

この状況で一番まともな枕と言えば、貴方の体しかない。体勢的に、膝枕が適当だろう。
まさか男の貴方が、膝枕をする日が来るとは思わなかった。
これで虚弱が、少しでも楽になってくれると良いのだが……。

そう心配していると、校舎の方からチャイムが鳴り響く。
……遅刻か。まあ、どうせあのまま校舎に向かったとしても遅刻は確定事項だ。今更問題ではない。
一時限目はサボるとして、二時限目、三時限目……どうなるだろう。

今後の事を憂い、貴方は溜め息を吐く。
そして、その元凶足る虚弱を見下ろす。

太陽から逃れられたからか、横になったからか、枕があるからか。
虚弱の顔は、少しばかり安らいだように見える。呼吸も、落ち着いているようだ。
気を失って、そのまま眠ってしまったらしい。

貴方「……まったく」

虚弱の額に浮いた汗をハンカチで拭きながら、貴方は笑う。

貴方は、実に中途半端な人間だ。
面倒臭がり屋のくせに、困っている人が見過ごせない。
つい、誰かの為になる事を精力的に選んでしまう。行動してしまう。
ある種の矛盾を孕んだ、そんな生き物。

貴方にとって虚弱は、それを思い知らせるために降ってきた人のようだった。

客観的事実として、虚弱の世話をする事は、大変な事だ。俗に面倒だとされるだろう。
なのに貴方はお得意のお節介で、こんな真似をしている。面倒臭がり屋のくせに、自分を犠牲にしてしまう。
彼女と居ると、自分と言うものが……中途半端で有りながら確固として存在しているように思えてくる。

それがまるで、日常のようであるように思えてしまう。

溜め息を吐く。同時に、穏やかな風が吹き抜ける。
貴方と虚弱の肌を撫で、髪を浚う。少し、冷たかった。

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