過去ログ - 魔法少女フラン☆マギカⅢ -SS速報VIP

過去ログ - 魔法少女フラン☆マギカⅢ

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321:1[saga ]
2013/06/12(水) 22:58:40.61 ID:vfACHmue0

　店頭に置かれている物に気が付いた。

　文はハッとする。

　そうか！　なら、聞いてみる価値がありそうね。

　それは油揚げ。あの八雲の管理者の式が好んでいる油揚げだ。
いつもは店頭なんかに置かれてはいない。
人里にはよく来るし、この豆腐屋も、立地の関係でその目の前をよく通るからそれが分かるのだ。

　文は不自然に思われないよう、早くもなく遅くもない歩調で豆腐屋に近づき、にこやかな顔で中に入った。

「こんにちはっ！」

　元気のいい声が狭い店内にこだまする。
すぐに店の奥から返事が返って来て、壮年の男が出てきた。
店主だ。特に驚いた様子もなく、「いらっしゃい」と笑う。

「久しぶりですねえ、天狗の記者さん。今日は取材で？　それとも買い物で？」

「取材……と言いたいところなんですが、ネタ探しでして。あはは」

　困ったように笑う文。偽らざる本心だった。

「ネタですかい？　生憎、うちもそんな記事にするような話は仕入れてませんよ。
いつも通り豆腐を売っているだけですわ」

　店主は傍らの勘定台に片手をついて、陽気な声で言った。
彼の腰ほどの高さの木製の勘定台は、随分と年季が入っている様子で、
木は黒ずみ、角が削れて丸くなっていて、削れている部分も黒くなっていた。

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