192:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/29(水) 07:03:08.41 ID:wqPpjqSYo
◇
ツキはそのようにして、この屋敷での暮らしを続けた。
いなくなる気配もなければ、例の何かを「取り戻す」こともできてはいないようだった。
またある日ツキは、わたしを森の散歩に誘った。
最初の頃こそ落ち込んだりしていたが、彼はそのうち開き直ったように明るくなった。
わたしも段々、彼がわたしに危害を加える気がないということを、実感と共に理解し始めていた。
だからその散歩にも、付き合う気になったのだ。
「ツキは、どうして森の中を歩くの?」
傘をさして、並んで歩きながら、わたしは訊ねてみた。
ただの気分転換とは思えないほど真剣に、彼は森の中を歩いていたのだ。
「さあ?」
「わたしには言えないこと?」
こんなふうに訊ねると、シラユキもツキも、決まって黙り込んだ。
鳥の声すら聞こえない森の中で、雨が木々の梢を打つ音だけが響く。
世界から取り残されているみたいだ。でも、"世界"ってなんだろう。どこだろう?
633Res/436.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。