過去ログ - 少女「雨が止んだなら」
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192:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/29(水) 07:03:08.41 ID:wqPpjqSYo



 ツキはそのようにして、この屋敷での暮らしを続けた。
 いなくなる気配もなければ、例の何かを「取り戻す」こともできてはいないようだった。
 
 またある日ツキは、わたしを森の散歩に誘った。
 最初の頃こそ落ち込んだりしていたが、彼はそのうち開き直ったように明るくなった。
 
 わたしも段々、彼がわたしに危害を加える気がないということを、実感と共に理解し始めていた。
 だからその散歩にも、付き合う気になったのだ。

「ツキは、どうして森の中を歩くの?」

 傘をさして、並んで歩きながら、わたしは訊ねてみた。
 ただの気分転換とは思えないほど真剣に、彼は森の中を歩いていたのだ。
 
「さあ?」

「わたしには言えないこと?」

 こんなふうに訊ねると、シラユキもツキも、決まって黙り込んだ。
 鳥の声すら聞こえない森の中で、雨が木々の梢を打つ音だけが響く。
 世界から取り残されているみたいだ。でも、"世界"ってなんだろう。どこだろう?




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