過去ログ - 少女「雨が止んだなら」
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307:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/06(木) 06:31:09.11 ID:4Z+Lx22no



 わたしとシラユキは言葉もかわさずに屋敷に戻った。
 ツキは森の奥に逃げ込んだという。まだ、つかまってはいないらしい。
 
 ひとり部屋に戻り、ベッドに寝転がる。それからさっき話した内容を吟味した。
 この世界のこと、わたしのこと、シラユキのこと、ツキのこと。
 
 そして自分の記憶にある「現実」のことを考えた。
 思い出してみると、それはさほど悪くないように思えた。

 ツキがいた。彼の両親は良い人たちだった。わたしにも優しくしてくれた。
 それにシラユキが言っていたように、現実には面白い本もあったし、音楽だってあった。
 映画だってドラマだって娯楽には事欠かなかった。その中にはいくつか好きなものだってあった。

 きっとわたしが知らないだけで、現実にはたくさん、素敵なものや場所があるのだろうと思う。
 そして生きてさえいれば、そうしたものを求め、出会い続けることができるのだ。
 
 でも、それだけと言ってしまえば、それだけのことだった。

 本も音楽も映画も、実際の境遇からわたしを救ってくれるわけではなかった。
 耐える手助けにはなるかもしれない。でもそれだって結局、それだけのものだ。
 耐えたあとに何かを残してくれるわけでもなかった。




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