327:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/07(金) 06:01:12.04 ID:UQU3TNtlo
パニックになってそこらじゅうを振り向いたせいで、自分が進んでいた方向が分からなくなる。
自分の間抜けさに泣きたくなってきた。
皮肉なことに、再び正確な方向を把握できたのは、鼠が入っていった隙間の位置のおかげだった。
わたしは緊張しながら先に進む。
通路の突き当りは、行き止まりになっていた。
わたしは溜め息をつく。
それから周囲を見回して、不審なところがないかを確認した。
少なくとも鼠が出入りできそうな隙間は三か所ほどあった。行き止まりの天井の隅には蜘蛛の巣があった。
風もない澱んだ空気。饐えたような臭気。
なんだかもう帰りたい気持ちだ。なんでツキのためにこんな思いをしなければならないのだ。
そう思うと涙が出てきそうになった。暗いし、怖いし。でも、それはわたしのせいなのだ。
そしてツキだって、今頃同じようなことを考えているに違いない。
森の中で雨に打たれて、どうして自分がこんな思いをしなければならないのかと。
それを思えばあまり弱気なことも言って居られない。
それでもわたしは、怖くてその場で少しだけ泣いた。
死にたがりが鼠に怯えて泣くのもおかしいものだとも思ったけれど、それとこれとは話が別だ。
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