449:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/14(金) 06:44:40.09 ID:DzmBzCz9o
◇
ツキと初めて会った時のことを、わたしは思い出した。
わたしが走ることを拒否して、でも結局何も変えられず、ふたたび走り出した頃。
ある雨の日の夕方、わたしは家の近くの児童公園に、ひとり傘をさして、じっと立っていた。
公園にわたし以外の子供の姿はなかった。
そこに偶然通りかかったらしい男の子が、わたしに声を掛けたのだ。
わたしは彼のことを知っていた。
近所の家に住む、ひとつ年上の男の子。ちょっとぶっきらぼうで、少し怖かったのを覚えている。
「なにやってんだ?」
彼はそんなふうにわたしに話しかけた。わたしは答えに困った。
「なにも」
やっとのことで答えると、彼はどうでもよさそうに何度か頷いた。
「お前、名前は?」
わたしは自分の名を名乗り、それから彼の名を訊ねた。
ツキ、と彼は名乗った。
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