491:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/16(日) 07:48:24.23 ID:2Yrmim71o
真っ先に声をあげたのは、少し離れた位置にいた村長だった。
「捕えろ!」
という彼の叫びに、
「動けばこの女を撃つ」
ツキは大きな声で答えた。その声は笑っているように聞こえた。
わたしは背筋が凍るのを感じた。彼は村長の顔を見て続ける。
「嘘だと思っているな? でも俺は撃つ。お前らに捕まりそうになったら撃つ。
お前らに捕まったら、俺は死んだも同然だからな。だとすれば、この女を撃ったって同じことだ」
その声を聞いて、村人たちは動くのをやめた。誰もなにもできなかった。
わたしは冷たい汗が流れるのを感じる。状況の変化に、ついていけない。
「そう心配するなよ。あんたらのたくらみを邪魔しようと思っているわけじゃない。
ただ、俺らは抜けさせてもらうだけだ。かまわないだろう?」
広場を沈黙が支配した。誰もなにも言わなかった。
雨の音が降り続いている。
何か決定的なことが起こったのだと、わたしは遅れて気付いた。
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