599:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/24(月) 04:04:00.05 ID:k0zfLIWso
シラユキはまだ何かを言いたそうにしている。
わたしはその言葉を待っていたけれど、その声はいつまで待っても訪れなかった。
やがて、彼女はふわりと笑う。わたしはなんだかくすぐったいような気持ちになった。
そうして、彼女は最後に、
「ごめんなさい」
と苦しげに言い、
「ありがとう」
と笑って付け加えた。
わたしは前に足を踏み出した。
すると、足の裏からごつごつとした岩の感触が伝わってくる。冷えた空気が肌を撫でた。
一歩進むたびに、雨の音が激しさを増していく。
わたしは指先を伸ばし、その皮膜に触れる。
するりと、何の抵抗もなく、飲み込まれていく。
わたしは最後に振り向こうかと思って、やめた。
それから、不意に思い出して、「さよなら」と、そう呟いた。
それで最後だった。
633Res/436.26 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。